2019年オーストラリア研修

移民・多文化共生・高齢社会についての知見を深めるべく、8/26より20日間のオーストラリア研修を行いました。 キャンベラ・メルボルン・シドニー・ブリスベンの4都市を巡り、各都市の大学でのディスカッションや、多数の企業や行政・介護施設の訪問を行いました。 日本において今後外国人労働者の受け入れが加速するにあたって、どのような社会を目指していくべきかについて深く考えさせられる機会になりました。

討論会

ニューサウスウェルズ大学、シドニー大学、クイーンズランド大学では、討論会を行いました。研修テーマに基づき、「外国人介護士は現地の言語をfluentlyに話すことが必要か?」という題目で議論を行いました。fluentlyの捉え方にもよるが、シドニー大学の講師が紹介してくださった、洗剤と薬を識別できなくて高齢者に洗剤を飲ませてしまった例のように、その職業で利用される用語の理解能力は必要だという意見がある一方、心理面のサポートをすることが重要と考え、言語能力は日本語で日常会話ができる程度で良いという意見もあり、どちらかの意見に偏らなかった点が興味深く感じました。また、働きに来ることが目的で、かつ短期滞在になってしまう多くの外国人労働者にとって、日本語を学ぶモチベーションはどれほどであるのか、同じ文化のバックグラウンドを持っている方が断然相互理解が容易であるから、日本において日本人介護士も十分必要であるという指摘もありました。英語が公用語で、長期・永続的滞在を認めるオーストラリアとは異なる障壁が日本にはあることを再確認させられました。

施設・企業訪問・インタビュー

大学の教授のお話やクラスの聴講、企業・行政機関・法律事務所・小学校・介護施設の訪問など幅広い経験をさせていただきました。それぞれのお立場からのお話を伺うことで、多角的にオーストラリアの移民・多文化共生・高齢社会について考えることができました。オーストラリアはもともと移民から成る国家であり、多文化共生というものを意識することのないほど幼少期から根付いていることや、多文化共生教育や移民の包摂の諸策は、時折驚くべきものがありました。介護施設においても、高齢者の尊厳を考え、様々な工夫がされているのを目の当たりにし、貴重な経験になりました。

アラムナイ会での発表

アラムナイ会で、4月から続いたオーストラリア研修の報告を行いました。アラムナイ会参加者からの鋭い質問もとびかい、充実した発表となりました。

第11回KIPシンポジウムでのアイデア発表

1年と2か月に渡るオーストラリア研修の最終研究報告として、「DiSCo City計画」をシンポジウムにて発表しました。 詳細は、コチラをご覧ください。

全体を通して

今回の研修では、日本において高齢社会が進展し、今後外国人労働者の受け入れが加速するにあたって、どのような社会を目指していくべきかについて深く考えさせられる機会になりました。各メンバーの知見が深まったことで、事後研修でも今まで以上に活発な議論ができるようになりました。今回の研修を行うにあたって、パッカード理事長をはじめとする、ご協力を頂いた多くの方々に改めて感謝の意を表したいと思います。
(東京大学4年 小峯千佳)

参加者の声

今回のオーストラリア研修では、特に高齢化問題と移民問題に焦点を当ててキャンベラ、メルボルン、シドニー、ブリスベンの4都市を訪れた。 実際に各都市を訪れ様々な方面の専門家の話を聞く中で、一部にはアジア人の出世を阻む「竹の天井(bamboo ceiling)」と呼ばれる白豪主義の名残があることや、ワーキングホリデーにおける労働搾取の問題などオーストラリアが必ずしも自分たちがそれまでに想像していたような理想的な社会ではないと感じた。同時に、多文化共生社会の定義について改めて考えさせられた。

また、オーストラリアが移住先として世界でもトップクラスの人気を誇っている理由として、28年連続の経済成長が挙げられた。移民受け入れ時に家族帯同を認めることで、第二世代、第三世代が主要な労働力にとして国に貢献するという長期的な目線が、結果的に好循環を生み出し、このような経済成長を実現したのである。このことから、移民の視点に立って物事を考え、移民問題を経済、政治を絡めた包括的な視点で見ていくことが必要不可欠であると改めて実感した。

高齢化問題については、オーストラリアは日本ほど高齢化が進んでないにも関わらず、日本以上にリタイアメントコミュニティと呼ばれる健康な高齢者向けの施設が充実しており、高齢化社会としての日本の将来像を垣間見た気がした。また、高齢者のボランティア参加率の高さや、スポーツを通したコミュニティ内での繋がりの多さなど、個々人の健康に対する意識の高さも日本が見習うべき点であると感じた。 この研修で得た知見を今後の研究につなげ、自分たちが5,60年後どのような社会を作りたいのかについてさらに考えを深めていきたい。
(東京外国語大学2年 三井柚香)

今回のオーストラリア研修は「人口減少社会における移民政策」というテーマを持って開催された。現地では、移民関係や日本とオーストラリアの関係に詳しい大学教授や現地大学生、オーストラリア・日本両政府機関の方、あるいは日系企業や現地企業で活躍されている方など様々なオーストラリアで生活をする方にお話を聞くことができた。我々は人口減少問題のうち高齢化社会について、また移民のテーマに関しては多文化共生について何か知見を得ようと訪問をさせていただいたが、現地でしか知ることのできない興味深いお話を聞くことができた。 現地の学生から聞いた話のうち、オーストラリアでは幼い頃から非常に多くの異なるバックグラウンドを持った人と接する機会が多いため、彼らと接することに抵抗を感じないという話が印象的であった。外国人定住人口や訪日外国人の人数が増えているとはいえ、少なからぬ数の日本人が彼らと自然と接することができないという現状があり、環境要因が大きいのではないかと思った。またメンバーからは、オーストラリアでは外国人留学生が非常に多くオーストラリア経済を支えるビジネスとして確立していることに感嘆した声や、日本人の我々より日本のことをよく知っていて日本のことを愛好するオーストラリア人にたくさん出会ったことでもっと日本のことに精通している必要があると実感したという感想を聞いた。訪問の合間に観光をする機会もあり、訪れた4都市それぞれの良さや魅力、またそれらの間の違いを実感できるまたとない機会となった。これから事後研修という形で研修の内容を振り返っていくがオーストラリアで学んだことを最大限に生かしていきたい。
(早稲田大学2年 倉田怜於)

アラムナイの視点

以下では、研修に関連してアラムナイの方から寄稿頂いたものを掲載しています。

おススメ書籍紹介

ここでは、KIPメンバーが日々の研究で触れている本をご紹介いたします。

お知らせ

メルボルン総領事館のTwitterでご紹介頂きました。

助成:一般社団法人 東京倶楽部
一般社団法人 伊藤忠兵衛基金

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