2015夏期KIP Seminar
第二回セミナー開催。6月に引き続き、元朝日新聞論説主幹で、その後日韓の大学の客員教授などもされている日本国際交流センターシニアフェローの若宮啓文様にご講演をいただきました。戦後70年を迎え日中韓の間で歴史認識への議論が再燃する中、今回は安倍談話や靖国問題に焦点を当てた内容となりました。
まずセミナーの前半では、戦時中から脈々と連なる日本の内政や外交の歴史をお話しいただきました。中国・ソ連との友好関係を築こうとした石橋湛山に対し、アメリカとの関係性を重視した岸信介、再び中国に接近し日中国交正常化を実現させた田中角栄など、自民党の政治家がアジア・アメリカとどのように向き合い、日本の外交を行ってきたのか、わかりやすく説明していただきました。また、アジアの国々へ戦争による犠牲を正式に謝罪した村山談話が外交史上で果たす役割や現代における意義、安倍談話の展望と今後のアジアとの関係性などを伺い、今まさに生じているアジア外交の問題を歴史の観点から学ぶことができました。
後半では前半の講義を踏まえて、自らが首相であった場合どのような談話を発表するか、また靖国神社に参拝するか、という題でグループディスカッションが行われました。どちらの議題でも対立軸となったのは、国際関係を重視するか、国内のナショナリズムや慰霊の方々を重視するかというものでした。対立点は比較的わかりやすいものの、過去の歴史、外交史、経済、等が複雑に絡み合った問題では、お互いが納得のいくものを見つけることは難しいということを肌で感じました。歴史問題はナショナリズムが関わる繊細な問題であるうえに双方譲れない部分が多く、いかに妥協点を模索するかが今後の課題となるのではないでしょうか。(村上 智紀)