Project2014 アメリカ研修 参加者の声
聖心女子大学 文学部 歴史社会学科 国際交流専攻2年 佐野裕美江
半年に及ぶ準備期間と3週間の渡航。Glocalizationというテーマの下、日々取り組んだ準備は、自分とは何か、将来、世界でどのような役割を果たしていきたいのか、正面から向き合うことのできた非常に濃い時間であった。
アメリカという国は、想像以上に多様であった。多様であることが当たり前の国であった。そうした環境だからこそ、自分のidentityの出処を意識しやすい状況にあったと思う。約70億人いるこの地球を見れば、自分なんてちっぽけな存在かもしれない。しかし、その1人ひとりが多様な背景を持ち、人と関わりあいながら、生きている。他国の異文化にどうしても目が行きがちではあるが、今回、日本人も十分多様であるという見方もあるのだと気付いた。そして様々な日本人に出会い、日本人としての幅を今後広げ、日本への理解を深めていきたいと思った。特に興味深かったのは、日系人の方々の存在である。国とは何か、国籍とは何か、何気ない理解で済ませていたことの複雑さを目の当たりにした。ヒト、モノ、カネの流れがこれまでにもなく活発となっている現代社会の中で、それぞれの国、文化、人種の明確な定義は変化し続けている。時にはそうした動きによって失うものに敏感になることもある。しかし、重要なのは現代社会を長い人類の歴史の中に位置づけて捉え、変化から生まれる多様性に価値を見出し、より魅力的な世界を構築していくことではないだろうか。このように世界をミクロマクロ、様々な視点から捉えることは簡単なことではないが、だからこそ、そこに面白さを見出している。そして将来、海外での勤務に夢を抱く自分にとって、今回の研修を通じて自分の国を意識することは絶好の機会となった。世界の中の日本を捉え、その中で自分が日本人としてどのような役割を果たしていきたいのか、今後も問い続けていきたい。
東京大学 医学部 医学科 3年遠藤彰
今回の研修の中での根源的テーマは「アイデンティティ」であったように思う。特に今回、民族的、社会的、文化的、経験的、言語的、そうした様々な側面において一元的な何かに帰着できないアイデンティティを持つ人々と話す機会を多く得ることができた。そのこと自体が私たちの考えに深みを与え、また同時に私自身も一人の個人としてNationality/ Ethnicity/ Identityについて考える機会を得られたと思う。自分自身を顧みたとき、こうしたものについて今までほぼ無自覚でいられる程度にはシンプルなアイデンティティを持っているのだと思っていた。しかし、今回ある意味で多元的な自己認識を”持たざるを得なかった”人々と話す中で、混合していく社会の中で尚更に浮き彫りになっていく異質性や、混合に対するリアクションとしての自己確立への要求を感じた。そしてその上で、今後自分の生活の拠点が海外になる可能性について思いを巡らせたとき、故郷という「個人の経験の基盤となった土地」との訣別に比べて、社会のあり方そのものが違っているように感じられる他国に生活の拠点を移すということが自らの根幹そのものとの訣別のように感じられた。そうして初めて、今回の研修の中で出会った人々が抱えるアイデンティティの多元性とそれに対する意識をわずかに共有できたような気がした。
横浜国立大学 教育人間科学部 一年 荒井 俊
KIPアメリカ研修で得たものは一口に言って“自信”と“ホーム”であった。
研修の多くを、各々の大学の学生と共に寮に宿泊したが、実に魅力的な生活であった。Rice大学では、夜10時過ぎ頃からホストが友達と一緒にリュックを背負って勉強しに行っていた。Yale大学でも、パブリックスペースで12時近くになっても食堂でYaleの学生が友人同士勉強していた。そこでは生活のすぐそばに学習が位置しており、友人がただの友人でなくまさしく学徒であったのだ。世界屈指の優秀な学生とはいえ、それを裏付けるだけの学習量とそれを支える恵まれた環境があることを、実際にそれらの学生と寝食をともにし、公私問わず議論を交わすことで知ることが出来た。今まで全く別の世界にいると感じていた人々を身近に感じることが出来た瞬間であった。このことは私の“自信”につながり、猛烈な学習意欲を私の中で生んでいる。
また、今回の研修を準備の頃から振り返ってみると、忙しかったの一言につきたかもしれない。しかし、研修を終えて切に感じるのは、その苦労に比例して今まで感じたことのないような達成感と大きな自信、そして、苦楽を共にした仲間、あえてテーマに関連させるなら“ホーム”を手にしていることであった。それらは、苦労をむしろ成長する自分を見たいという好奇心へと変える、次の挑戦へと自分を向かわせる、仲間とともに何かをなそうとする原動力になっていると感じる。そして、その忙しさを乗り越える初めの一歩を踏めたのも、自分以上に多忙な毎日を過ごす研修メンバーや理事長を見て鼓舞され、自分の限界の少し先へと連れて行ってもらえたからなのかもしれない。そのことに感謝し、次は自分が誰かを鼓舞する存在、この研修の素晴らしさを態度によって証明するような存在になりたいと思う。
岐阜大学 工学部 機械工学科1年 足立善英
私は地域研修のひとつである岐阜研修からこのプロジェクトに参加した。岐阜だけでなく一般的に地方と考えられている地域が抱える労働者人口の流出、高齢化、産業の衰退といった問題を私たちとバックグラウンドの異なるアメリカの学生と交流することで、これら問題の解決の糸口を見つけることを目的とし私はアメリカへ発った。
今回のアメリカ研修で最も魅力的だった事は、ほとんどの日々をドームステイ、つまり学生寮に泊めていただけたことで、アメリカの大学生の私生活を直接経験できたことだ。ほとんどが学生寮で生活をしているアメリカの学生と日本の学生を比較することで、互いの良さも見えてきた。また、彼らの勉強に対する意欲は目を見張るものがあり、この勉強に適した環境を存分に活用していた。日本では知識を得る場所にすぎない教育機関がここアメリカでは生活の場のように感じられた。
今回の研修を通じて、私の住んでいる地域をより良くするためのとっかかりとなるものがいくつか見えてきた。今後、日本の文化とアメリカの良さをバランスよくミックスさせながら、アメリカ研修で学んだことを活かして多くの地域を活気づけられるように努めていこうと思う。
東京工業大学 生命理工学部3年 原田真実
英語がペラペラで無ければ参加できない、KIPのアメリカ研修はそういった場ではありませんでした。当然話せるに超したことはないのですが、ここではそれ以上に重視されていることがあると感じています。それは、話す中身です。アメリカ研修に行く約半年前から日本の各地域や東京にて勉強会を重ねて準備したことで、英語が得意とは言えない自分でも、現地で意見を戦わせることが出来ました。その経験は、大きな自信に繋がっています。また、勉強会を重ねる中で、尊敬し合いながら切磋琢磨できる仲間に出会えたり、理事長の近くで多くのことを学ばせて頂いたことも、一生の財産です。
もちろん現地でのプログラムも非常に魅力的です。例えばいくつかの場所で、現地の学生の寄宿舎に泊めて頂きました。彼らのメリハリある生活空間に身を置くことで、自分の生活を見直す良い機会になりました。また、メンバー全員で合わせて20社以上もの一流の日系企業にインタビューをさせて頂きました。大変緊張しましたが、学生のうちに第一線で活躍する方々にお話を伺い、目指す世界のイメージをすることが出来ました。大学では講義に参加したり、日本での勉強会の関連テーマでプレゼン・ディスカッションの機会を頂きました。回を重ねるごとに成長しているのが分かり、自分でも驚きの体験でした。
とにかくただ“アメリカに行く”だけではない魅力がたくさん詰まっているのがこの研修です。興味を持った方、是非挑戦してみてください。
※所属・学年は全て研修当時のものです。
(社)KIP知日派国際人育成プログラム
委員会一同