2020.08.22. "I understand that I don’t understand. But I stand with you"に思う
アラムナイ 横井裕子氏
8月オンラインフォーラム開催。アラムナイ会NY在住の横井裕子氏から、”Black Lives Matter”活動や白人警官による黒人男性殺害などの人種問題を中心にお話頂きました。今回は日本時間20時/ニューヨーク時間7時という時差がありながら、オンラインで日本とニューヨークを繋ぎ、フォーラムを開催することができました。フォーラムは質疑応答形式で進み、その後「SNSによる発信は規制されるべきか、自由であるべきか」というテーマで討論しました。
横井裕子氏
略歴
京都生まれ、4歳でアメリカに渡り、2003年に日本帰国。慶應義塾大学卒業後、ニューヨーク大学に留学し、国際教育修士課程において社会学、人類学、政治学、平和学など幅広い視点から教育について学ぶ。2020年に修士号を取得し、現在はニューヨーク本部の国際NGOでインターン。
内容紹介
まず、差別について。横井さんによると差別的な意識は皆が持っているものであるということでした。Unconscious Biasというものは必ず存在します。差別を受けている当事者に自分の意見が間違っていると指摘されたら素直に謝り、受け入れる必要があると仰っていました。受け入れて初めて無意識の差別に気づくことができるのかもしれません。加えて言語が無意識な差別を助長している可能性についても言及されました。例えば囚人という言葉は極悪な人というイメージがついてしまいます。囚人の代わりに『有罪をうけた「人」』という表現などを使うことで人間としての人権があることを強調し、差別ではなく区別するための言葉遣いによって差別を減らせるのではないかと仰っていました。
またニューヨークに在住され、黒人の友人をお持ちの横井さんから、黒人男性が生活の上で注意すべき点が複数あることを教えていただきました。例えば夜中に人の後ろを歩いていると犯罪者と疑われるため道を変えたり、傘の持ち方に気を配ったり、ポケットに手を突っこむと銃所持が疑われるので気をつける等です。また警察に対する恐怖心があり、警察署の前をなるべく通らない道を選ぶようにしているとのことでした。白人警官による黒人男性の殺害が続いたことや、黒人男性に対する他人種からのバイアスにより黒人市民が「いつ捕まるか分からない」という恐怖に晒されている事実に衝撃を受けました。このような社会になった要因として法律、政治、歴史が深く絡んでいることを横井さんからご紹介された映画 “13TH〜憲法修正第13条〜”にも詳しく描かれております。法改正がされても形を変えて黒人が恐怖に晒される状態は今も変わらないことを実感しました。ここ数年、人種差別問題は解決されつつあるのではないかと考えていた私はジョージフロイド事件で衝撃を覚え、今回の横井さんのお話で全く解決されていないことを痛感しました。
最後にアジア人として何ができるかについてです。横井さん自身デモや署名に参加することにより、社会が変わったという経験をされました。また実際に今回の問題に対してアジア人も声を上げ、議論に入っている場面が多く、ただの傍観者ではなかったとおっしゃっていました。そして今回は人種差別について詳しくお話しをお聞きしましたが、社会に存在するあらゆる「差別」(ジェンダー、障がい者、LGBTQに対する差別など)にこれを機に向き合う必要があるという強いメッセージを私たち日本人に向けて発信されていました。
これらのお話しを質疑応答形式で伺った後、グループに分かれて「SNSによる発信は規制されるべきか、自由であるべきか」というテーマで議論しました。多くの班で規制すべきという意見が上がり、規制の対象は誹謗中傷やフェイクニュース、差別に関するものが出ました。中にはフェイクニュース発信者に刑罰を設けるべきという意見が出た一方、表現の自由は厳守されるべきであり、性善説でリテラシーを持って利用してもらうという対照的な意見により議論が盛り上がりました。
横井氏は最後に人々が社会の形を作っていく、主体性を持って行動すれば社会は変わると仰っていました。「批判されても一度受け入れる」。これにより、多様化の中でも人々が理解し合える世の中になるのではないかと主張されていました。本フォーラムでは日本では知り得ることのできない、アメリカでの人種差別の現状を横井氏から説明を受け、日本在住の学生にとって非常に貴重な機会となりました。時差もある中、KIP会員のためにお話しをしていただいた横井氏に感謝申し上げます。ありがとうございました。
(明治大学経営学部4年 赤澤明日香)