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2020.11.7 「OECDで働く」&「メンタルヘルスリサーチとは」
経済協力開発機構 雇用労働社会政策局 Young Associate 瀧野 俊太氏

11月フォーラムでは、日本とフランスパリを結び、経済協力開発機構(以下OECD)でYoung Associates Programmeの一員として2年間の研修を行っていらっしゃる瀧野俊太氏を講師に迎え、「若者としてOECDで働くとはどのような経験か」、また瀧野氏がOECDで仕事とされている「メンタルヘルスのリサーチ」についてお話を伺いました。

瀧野俊太氏

略歴

東京生まれ。イギリスの中学・高校に通い、オックスフォード大学(哲学・政治・経済)を2018年に卒業。在学中はPresident of the Oxford University United Nations Association(2016-17)を務め、国際関係に関するディスカッションを通してオックスフォード大学と九州大学を繋げるなどして日英関係の強化活動に力を入れられた。その後、一年ほど日本のシンクタンクAsia Pacific Initiative (2018-19)で働き、2019年9月からYoung Associates Programmeのメンバーとしてパリ本部の雇用労働社会政策局で働き、現在に至る。

内容紹介

フォーラムの前半では、「若者としてOECDで働くとはどのような経験か」、そして「メンタルヘルスのリサーチ」について瀧野氏からお話を伺いました。

まず初めに、OECDの発足から改組の歴史や現在の組織形態をご紹介頂いた上で、学生時代に日英両国を行き来していたご経験から国際機関で働くことを志望されたことや、実際に国際機関で働くには各国政府からの派遣や大学の特化したプログラムのほか、瀧野氏がメンバーでいらっしゃるYoung Associates Programmeなどの様々なパスがあることをご紹介いただきました。OECDの業務はシンクタンクに近く、各国から様々なデータを得てレポートを作成することや、日本は予算の拠出金のうち常に上位にある一方で事務員の人数は全体の5%ほどであり、英語の障壁などから現場における影響力が高くなりづらいといいます。

次に、瀧野氏がOECDで仕事とされている「メンタルヘルスのリサーチ」について解説頂きました。メンタルヘルスとは、『すべての人が自分自身の可能性を実現し、人生における通常のストレスに対処し、生産的で実りある仕事ができて、自分や自分の地域社会に貢献することができるwell-beingな状態』であるとWHOで定義されています。瀧野氏は、メンタルヘルスは精神障害の有無などに関係なくあらゆる人のものであり、どんな人であってもより良いものに出来ること、そしてメンタルヘルスについて語る際には用いる単語が重要になることを強調されました。また「精神疾患である/ない状態」と「well-beingである/ない状態」を座標軸で捉えた時、「精神疾患でない」かつ「well-beingでない」状態の人が、「well-beingである」ようにするための政策を施すことは難しいことや、肉体的な健康と比較してデータ収集や対策について遅れていることを指摘され、OECDがデータ収集を行うにあたっても、各国から得られるデータの基準が定まっていないことや、個人情報の取り扱い、アンケート回答への精神的障壁など様々な問題を伴うトピックであるとおっしゃられました。質疑応答では、コロナ禍においては人生の中で自立するための様々な準備が必要となる若い世代が特にメンタルヘルスに影響を受けやすいこと、SNSがメンタルヘルスに影響を与える可能性、メンタルヘルス改善のIT活用についても触れられました。

フォーラムの後半では、「メンタルヘルスケアにおける問題解決のためのITツール利活用」について、その可否から具体案の提示まで含めたディスカッションを行いました。アプリなどの利活用については賛成意見が多くあがり、メンタルヘルスの自覚・無自覚を問わないあらゆる人を段階的に分け、日常的な健康データ収集により自身のメンタルヘルスの変化の理由として一助となるものや、瞑想やヨガなどのソフトテクニックを教えてくれるもの、情報共有の掲示板や日記機能、医療機関へのヘルプラインを提示してくれるものなどが具体的に提案されました。瀧野氏からは、ITツール内で完結したり絶対的な判断を下したりするのではなく自助を促すことに主眼を置くべきであることや、メンタルヘルスについて理解を深める機能があれば望ましい、といったご意見を伺えました。

全体を踏まえ、瀧野氏からはこの機会にメンタルヘルスについて話すこと、考えることを続けて欲しいという言葉を頂きました。コロナ禍にある私達にとって、若い世代がメンタルヘルスへの影響を受けやすいといった話はまさに自分ごとでありながら、日常においてはメンタルヘルスという言葉についてどこか他人事に思いがちで、自身のメンタルヘルスについて無自覚でありがちであると思います。誰であっても客観的分析を通じてメンタルヘルスを改善可能であると知ることができ、そして国際機関の活動が私達の生活や向き合っている問題と地続きであることを改めて感じることができた貴重な機会となりました。時差もある中、フランスからKIP会員のために時間を割いていただいた瀧野氏にこの場をお借りして感謝申し上げます。

(慶應義塾大学経済学部4年 太田 暢)

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