2019.12.06『「働く」ことについて本当に大切なこと(続編)』
株式会社 リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 所長 古野庸一様

11月フォーラム開催。今回は前回に引き続き、リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所所長の古野庸一様をお招きし、天職の見つけ方や、居心地良く仕事をするための環境の整え方、そして理想の仕事とは何かについてご講演いただきました。討論は、理想の相手を見つけるための最良の方法、違う職種で働く意味、キャリア選択と教育など多岐に渡ったものとなり、活発な議論がなされました。

古野 庸一氏

略歴

1987年東京大学工学部卒業後、株式会社リクルートに入社。南カリフォルニア大学でMBA取得。キャリア開発に関する事業開発、NPOキャリアカウンセリング協会設立に参画する一方で、ワークス研究所にてリーダーシップ開発、キャリア開発研究に従事. 2009年より現職。著書には『「働く」ことについての本当に大切なこと』、『「いい会社」とは何か』(講談社現代新書)、『日本型リーダーの研究』(日経ビジネス人文庫)などがある。

内容紹介

初めに前回のご講演のまとめをしてくださり、その後仕事の3つの捉え方、「ジョブ」、「キャリア」、「コーリング」を提示してくだいました。「ジョブ」とは、時間を切り売りしてお金を稼ぐという、言わば最もネガティブな職への捉え方であり、「キャリア」は出世や名声を得るための手段としての仕事の捉え方、そして「コーリング」とは天職を指します。古野氏によると、5割くらいの人がコーリングを見つけているとされ、その割合は年齢が上がるにしたがって増えるとのことでした。そこで古野氏は、理想の結婚相手を探すための方法という切り口から、理想の相手に出会うためには何人と出会う必要があるかを問われ、その議論をもとに、20代のうちは気になる仕事を3つはやってみる期間にすべきだとお話しされました。

そして、仕事においては、自らが一定の役割を果たし、その場に受容されているという居心地感が大切で、また能動的に仕事を行う環境を整えていくべきだとされました。具体的には、タスクそのものを変える、関係性を変える、意味づけを変えることを挙げられ、やらされ仕事を能動的なものに変える重要性を説かれました。そのうえで、仕事はこなすものではなく、それを通じて自らの能力を高めることが重要だとし、社会人になってからの学びには直接的な経験が大きな割合を占めるとご指摘されました。そういった直接的な経験を受けて、リフレクションを行うことは、過去を振り返り、次の動きに関する示唆を得る役割があるものの、その一方で、ネガティブなものにとらわれすぎないことが大切だとおっしゃいました。最後に、理想の仕事とは、楽しさと意義が感じられる仕事だとしたうえで、自らも他の人から一緒に働きたいと思われるような人、相手の立場に立てるような人になることが重要だと述べられました。

討論としては、まず理想の結婚相手を探すための方法について議論が行われ、良い人がいれば経験数は関係ないという意見も出ましたが、相手が良い人かどうかは他と比較しないと検討できないという意見が主流でした。また、前半の古野氏の講義を受けたディスカッションでは、若いうちに異なる職種を経験すべきか、同じ職種で異なる会社や場を経験すべきかという話が出て、スペシャリティがなければ海外との競争に打ち勝てないという意見が出ましたが、米国でも違う職種に就くことが増えていることや、自分のスペシャリティを見つけるために異なる経験を積むべきという意見もありました。そして、議論はキャリア選択と教育という話にまで及び、ヨーロッパのように早い段階から自分の進路を選ばせる方式をとる国もある一方で、米国のように大学においてリベラルアーツ教育を行い、幅広い学びを提供する国もあり、日本はその中庸にあるという点で今後の在り方について活発な意見交換がなされました。

(東京大学大学院工学系研究科修士2年 田口 遼)

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