2018.5.8「リニア中央新幹線の意義と東海道新幹線の役割」
東海旅客鉄道株式会社 広報部東京広報室 粂川浩二様

粂川浩二様:東海旅客鉄道株式会社に入社後、総合職として、人事部などを勤められたのち、現在は広報部東京広報室室長を務められている。

5月フォーラム開催。今回は東海旅客鉄道株式会社、広報部東京広報室、粂川浩二様をお招きしました。ご講演のタイトルは「リニア中央新幹線の意義と東海道新幹線の役割」で、「概要〜JR東海の誕生と使命〜」「東海道新幹線の競争力強化」「リニアの挑戦」という三つの論点を中心に、リニア中央新幹線と東海道新幹線が今後の日本にどのような変化をもたらすのかについてお話しいただきました。

はじめに、粂川様は「概要〜JR東海の誕生と使命〜」という観点から、国鉄の崩壊とJR東海の誕生についてお話しくださいました。具体的には、1949年から1987年まで存在していた国鉄は、政治の影響を強く受け、運賃の値上げや、数十年後を見据えた投資が困難であり、サービスの質や従業員の士気の低下が発生しました。最終的には、国鉄は37.1兆円もの負債を抱え倒産してしまいました。その後1987年に、国鉄をいくつかの組織に細分化しJR東海が誕生しました。JR東海のマーケットとなるのは、日本の総面積の約24%の地域、人口は総人口の約60%、GDPは全体の約65%であり、日本の大動脈であるこの地域、すなわち東京と大阪を太く確実につなぐことが使命だと仰いました。

次に粂川様は「東海道新幹線の競争力強化」という観点からお話しくださいました。東海道新幹線は、安全性、正確性、快適性、高速性、高頻度、環境適合性、の6つのポイントを重視しており、例えば安全性という観点では、地震が発生し、P波を感知してから2秒で新幹線を停止させるか否かの判断をする仕組みを整えたり、2本のレールの内側にそれぞれ1本ずつレールを引くことによって車輪がレールから外れて車両が脱線しないような仕組みを構築したりしているとお話しになられました。

最後に、「リニアの挑戦」という観点から、リニアがもたらすものは大きく分けて、大動脈の二重系化、移動時間の短縮による三大都市圏の一体化、東海道新幹線の活用可能性の拡大の3点であるとお話しくださった。また、あえて時速500km、地上から10cmの浮上走行という革新的技術に挑戦する意義の一つとしては、地震が発生した際にも安全を確保するという、日本固有の背景もあるとおっしゃった。さらに、中央新幹線はJR東海が全額自己負担で建設を行なっているとお教えくださった。

以上の講演を踏まえ、私たちは「リニア中央新幹線のメリット、デメリット」というタイトルでグループ討論を行った。メリットとしては、東京と大阪が1時間でつながればビシネスパーソンにとって時間を有効活用できるようになるという点、単身赴任をしなくてよくなるかもしれないという点、旅行が気軽にできるようになるという点、人の移動が流動化するという点があがった。デメリットとしてはトンネルの採掘など環境への負荷がかかるという点、移動に時間がかからなくなるため観光地の宿泊施設の利用者が減少するかもしれない点、人口の都市部集中によって格差が拡大してしまうかもしれない点があがった。

粂川様はリニア開通による6000万人を超える都市圏の形成は世界に類を見ないと述べ、今回の講演は今後日本がどのように変化していくのかということを考える貴重な機会となりました。最後になりますが、お忙しい中、講演に時間を割いてくださり、ありがとうございました。

(野田 遼介)

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