2018.10.4「世界の金融市場を相手に働く意義-先輩から後輩たちへ−」
KIP アラムナイ 廣田隆介様

廣田隆介氏:慶應義塾大学卒業後、2009年三菱商事に入社。金利・為替・株式のマーケットオペレーションや在東南アジア事業投資先の資金調達支援を担当されたのち、2015年に現Spiral Ventures Pte. Ltd.入社。現在、プリンシパルとして東南アジア主要6ヶ国の新規投資及び投資先支援業務を担当されている。

本アラムナイトーク前半のご講演では初めに、近年身近になった様々なサービスをあげながら、スタートアップやベンチャーキャピタル(VC)が何たるか、そしてその投資の仕組みについて解説して下さいました。従来型の小規模ビジネスとは異なり急激な成長軌道を描くスタートアップは、成長を支えるための資金を必要とします。その為の投資、各種サポート、監視を行うのがVCであり、成功確率約7%にあたる黒字化可能な会社を見つけ出し、株式の売却によりリターンを得て収益化するビジネスとなっています。

次に、東南アジア経済が大幅な人口増に伴って高成長が見込め、さらにその特徴としてモバイル端末が広く普及していることや、スタートアップ投資の規模が日本以上であることについて触れられました。具体例として紹介いただいたユニコーン企業やエグジット例の中にはオンラインサービスで成長した会社や、東南アジアに適した配車サービスの他、日系スタートアップの展開例も見受けられました。一方で、東南アジア経済には未整備な金融インフラ、通信・物流網、商習慣や文化の違い、政治リスクなど日本とは異なる留意点が数多くあることも示唆されました。

最後にキャピタリストのキャリア例を踏まえ、新卒でどのようなキャリアを歩むべきか、いくつかの例をご提示いただきました。廣田氏が以前から関心を持たれていたVC業界に転職されたきっかけは、三菱商事に勤めていらっしゃった際、在シンガポールの金融子会社に出向し東南アジア関連ビジネスの成長速度を肌で感じた事だそうです。キャリアが複線化する時代においては、自分の強みを身につけた上で後悔しない選択をすることが大切だと仰いました。

後半は講義を踏まえて、「東南アジア地域において、市場価値の高い日本の事業は何か。またその事業が成長しやすい環境は日本とシンガポールのどちらか。」というテーマで学生同士のディスカッションを行いました。介護や健康管理、物流やサイバーセキュリティ、教育といった様々な分野の事業が挙がり、シンガポールに拠点を置いて東南アジアに密着した形式で展開する方が良いのではないか、という意見が多く出ました。廣田氏からは、身近な悩みの種や様々なマーケットの成功例からヒントを得て、自分のいる場所で変化を起こそうとする思考が重要であるとの言葉をいただきました。

日本でも様々なサービスが浸透し就職候補としてもベンチャー企業への関心が高まっている昨今、業界の仕組みについて理解を深められただけでなく、大企業とベンチャー企業の双方の利点やキャリアプランを多角的に捉える貴重な機会となりました。最後に、一時帰国中でお忙しいなか私たち学生のためにお時間を割いてくださった廣田氏に心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。

(慶應義塾大学経済学部 太田 暢)

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