2017.4.28 KIP Forum “トランプ政権が日本に与える影響”
藤崎一郎氏 前駐米特命全権大使
藤崎一郎氏:慶應義塾大学経済学部在学中に外務公務員I種試験合格。外務省に入省。米国ブラウン大学、スタンフォード大学に留学。ジュネーブ国際機関日本政府代表部特命全権大使、在アメリカ合衆国特命全権大使などを歴任。現在は、上智大学特別招聘教授・国際戦略顧問、一般社団法人日米協会会長を務める。
4月フォーラム開催。今回は、在アメリカ合衆国特命全権大使などを歴任され、現在は上智大学特別招聘教授・国際戦略顧問などを務める、藤崎一郎氏を講師にお招きしました。ご講演のタイトルは「ダッシュでスタートした日米関係」。ご自身の経験談なども交えて、現在のトランプ政権に関する分析と今後の国際関係ついてご講演を頂きました。
本フォーラムは二部構成となり、前半は藤崎氏のご講演と質疑応答、そして後半は講義を踏まえて、「米国の北朝鮮に対する積極介入の是非」とテーマを設定して、学生同士でディスカッションを行い、最後に藤崎氏より総評を頂きました。
最初のご講演では、今回のアメリカ大統領選挙におけるメディアの分析は本当に正しいのか、トランプ政権の背景にあるものは何か、トランプ政権に対してアメリカの三権分立は機能するのか、我々が現在のようなアメリカと向き合うのは本当に初めてなのか、そして日本はこのようなアメリカにどう対処していけばいいのか、という以上4点を中心にお話をして頂きました。
ご講演の中で藤崎氏はメディアの「分析」を鵜呑みにせず、自分自身でデータや情報と向き合うことの重要さを強調しておられました。今回のアメリカの大統領選挙においても、メディアは米国内でのアンチグローバリズムや、貧富の差に関する不満などが高まり、必然的な結果としてトランプ政権が誕生したかのように報道しています。しかしながら総得票数において、クリントン氏はトランプ氏を大きく上回っており、実際のところペンシルヴァニア・ミシガン・ウィスコンシンの3州における46の選挙人をトランプ氏側が僅差で獲得したことが勝敗を分けています。「アメリカが内向きになったからトランプ政権が誕生した」という論理の矛盾を、講演の冒頭から鮮やかにしかも明快に指摘してくださり、一気にお話しに引き込まれ、気づけばあっという間に40分にわたる講話のお時間が過ぎておりました。
その後の質疑応答では、北朝鮮や南シナ海をめぐる現在の世界情勢から、藤崎氏ご自身の経験に関する事まで、学生から出た多くの質問に対し、過去の歴史的事実やご自身の経験談を交えて、丁寧にわかりやすく回答していただきました。
後半は、ご講演の中で言及されたトランプ政権の各国政府へのスタンスを踏まえて、「米国の北朝鮮に対する積極介入の是非」についてディスカッションを行いました。ほとんどの班で、軍事的介入と経済的介入を分けた点と、現在の介入のやり方は適切でないと指摘した点は共通していました。
各班がそれぞれの発表を終えたところで、藤崎氏に全体の講評を頂き、まず現在の介入のやり方は本当に有効でないのか。また介入と抑止の境界はどこにあるのか。といったご指摘を頂き、その上で今後の北朝鮮をめぐる国際関係において、いかに中国が大きな役割を担っているかということを、解説していただきました。
今回のフォーラムを通して、藤崎氏は世の中に出回る情報に対して、常にその根拠を問い、自分自身の頭で考えることの重要性を強調されておりました。私たちは、常日頃から批判精神を忘れずに、自分自身で思考して、様々な世界の出来事に向き合っていかねばならないと強く感じました。
最後にこの場をお借りして、お忙しい中講演をしてくださった藤崎様に心よりお礼申し上げたいと思います。本当に有難うございました。
(瀬戸多加志)