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新型コロナウィルス対策に思うこと~海外からの声~

見出し
1.イタリア
2.アメリカ合衆国カリフォルニア州Yolo郡
3.アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市
4.ヨルダン

イタリア

1. 状況推移

日付 出来事
2020/02/06 3人目の感染者が発生。例年通りベネチアカーニバルが開催する。
2020/02/21 感染者が20人に急増し、初の死者が出る。
2020/02/22 感染者が1日で4倍の79人に。イタリア政府は感染者の多発していた ロンバルディア州とヴェネト州で、合わせて11の自治体を封鎖する。
2020/03/07 感染拡大を受けて、新たな緊急事態法令を発表。ミラノやヴェネツィアを含む、北部の大部分を封鎖することを決めた。
2020/03/09 封鎖された北部の州から他の地域へ移動する人が後を絶たず、封鎖をイタリア全土に拡大することを発表。
2020/03/30 感染者数が10万人を突破する。これは当時最多の中国の感染者数を上回る。
2020/04/23 初めて回復者数が新規感染者数を上回る。

2. 新型コロナウィルス感染症への対応について

ヨーロッパで初めての感染爆発を起こし、アメリカに次ぐ死者数を出したイタリアだが、注目すべき点は、感染の集中した北部はヨーロッパでも先進的な医療体制を持っていたという点だ。ではなぜイタリアが欧州の感染の中心地となったのか。その1番の要因は政府の初動の遅れにあると私は判断する。最新の研究では、イタリアでの感染拡大は1月からすでに始まっていたとされているが、実際に政府が国内の感染対策に乗り出したのは2月下旬に入ってからだった。イタリアを含む欧州では、COVID-19を「中国などアジアのウイルス」と考える向きがあり、アジアからの来訪者さえ避けていれば感染は防げると考えていたようだ。実際、イタリア政府はEUでは最も早い1月30日に中国からの航空便の運航を停止した。一方で、イタリアでは医師の間でも国内の感染拡大はあまり想定されておらず、私がミラノで通院していた病院の医師も、2月に話した時には「風邪やインフルエンザと大差ないのに大騒ぎしすぎだ」と感染を心配する人々を揶揄していたほどだ。

ただ、3月に感染が拡大して以降のイタリア政府の対応は素早かった。医療体制が脆弱な南部の州への感染拡大を防ぐことを目標に、7日には北部のほとんどの自治体を封鎖。2日後には封鎖の対象を全土に拡大した。イタリアにとって最大の誤算は、EU諸国がイタリアの医療物資支援の要請に応じなかったことだろうと私は思う。ドイツ、フランスなど従来EU内の連帯と統合を重視してきた国のこうした態度は、今後の欧州統合に深い傷跡を残すことが懸念される。

4月25日時点では、イタリアの一日あたりの死亡者数は3月19日以来最少となったものの、感染者数は再び増加する傾向を見せており、依然として収束が見通せない状況が続いている。

(ボッコーニ大学留学、嶋津寛之)

アメリカ合衆国カリフォルニア州Yolo郡

1. 状況推移

日付 感染者数[1] 出来事
2020/02/27 11 隣の郡で経路不明の感染者が初めて発生[2]
2020/03/10 144 大学:翌週最終試験で対面を禁止[3]
2020/03/14 372 大学:6月までオンライン授業とする連絡[3]
2020/03/15 373 大学:50人以上の集会禁止[4]
2020/03/16 557 大学:米国発の全交換留学を停止[4]
2020/03/17 700 大学:研究活動を全て停止[6]
2020/03/18 828 郡:4/7まで外出制限を発令[5]
2020/03/18 大学:キャンパスのサービスを全て停止[6]
2020/03/19 1005 州:全域に外出制限を発令[7]
2020/03/21 日本外務省:感染症危険情報レベル2(不要不急の渡航は止めてください。)発令[10]
2020/03/25 2998 大学:経済的に困窮する学生にPC貸与[3]
2020/03/31 8210 郡:外出制限令を5/1まで延長[8]
2020/03/31 日本外務省:感染症危険情報レベル3(渡航は止めてください。(渡航中止勧告))発令[10]
2020/04/24 41335 郡:外出時マスク着用を義務化、ゴルフ・釣り・狩猟等の再開を許可[9]
※感染者数はカリフォルニア州における数字。

2. 新型コロナウィルス感染症への対応について

カリフォルニア大学デービス校は、カリフォルニア州Yolo郡の街デービスに位置する。デービスの人口は70,000人、そのうち学部生・大学院生が40,000人・教職員20,000人ほどが暮らす大学街である。年齢の中央値は25.2歳と非常に若い。デービスに居住する成人のうち、80%が大学に少なくとも一年以上通った経験があり、67%は4年制大学の学位を持つという高度な教育水準を持つ街である。大学の農業分野は全米で一位であり、カリフォルニア大学各キャンパスの中で最も広大な敷地を持つ(29.58km2、東京大学本郷キャンパスの74倍、東京板橋区と同じ程度)。学部生は白人23%、アジア系32%、ヒスパニック23%、海外からの留学生17%となっており、多様性に優れたコミュニティが形成されている。

上述の背景から、高学歴の住民が多くパニックにならないこと・多様な人種からなる街でアジア人などマイノリティに対する差別が一切なかったこと・豊かな自然と広大な街の中で自ずと社会的距離を保ち生活できること・街には浮浪者などがほとんどいないため人通りが減っても治安が保たれていることなどを理由に、COVID19のパンデミックの中でも安全だと判断し、外務省の感染症危険情報や日本の大学関係者と協議を重ねた上で、自己判断でデービスに滞在している。

3月中旬の外出制限発令前後で、州よりも郡が、郡よりも大学が早く方針を打ち出した。さらに、大学の学長の公式発表よりも1週間ほど早く各教授が授業のオンライン化や中止を決めた。大学は3月上旬の時点で人の出入りが多い建物の入り口に仮設の水道や消毒器を設置した。またオンライン授業の質の担保に尽力しており、一部の学生に経済的な支援も行っている。州・郡は毎日動画サイトでCOVID 19に関するブリーフィングを生中継しており、大学長からは毎週金曜日に最新情報が全学生に届く。各個人・団体の行動が迅速でその後情報を最新に保っているため、大きな混乱もなく安全に暮らすことができている。カリフォルニア州のニューサム州知事の支持率は83%を記録して全米の州知事の中で1位であり、パンデミック以前の42%から大きく上昇した。

街では外出制限令と同時に、スーパーマーケットや薬局、持ち帰りの飲食店を除いて全ての店が閉まった。スーパーマーケットでは店員全員がマスクをしており、客側のマスク着用も義務化された。3月上旬ではほとんどマスク姿の人は見なかったが、4月下旬には8割以上の人がマスクを着用していた。また、平日の昼間から家族連れが散歩していたり、公園で遊んでいたりする姿をよく見る様になった。

個人としては、外出制限開始後、数週間はアメリカで爆発的に感染者数が増える状況で、家族などと離れて暮らしていること・留学中に親しくなった友人が次々と街を去っていくことなどから、精神的に不安定になることが多かった。一方で、家族・日本の友人・他国に留学中の友人と電話することが増え、今までよりも多くコミュニケーションを取るようになった。周りの方々に支えられて自分が健康で安全に過ごすことができていると感じ、改めて感謝するとても良い機会になった。

[1]https://www.cityofdavis.org/about-davis/population-and-housing
[2]https://www.ucdavis.edu/sites/default/files/upload/files/uc-davis-student-profile.pdf
[3]https://finreports.universityofcalifornia.edu/index.php?file=12-13/pdf/fullreport-1213.pdf
[4]https://fivethirtyeight.com/features/most-americans-like-how-their-governor-is-handling-the-coronavirus-outbreak/

(カリフォルニア大学デービス校留学、鈴木啓太)

アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市

ニューヨーク市は人口約850万人、Bronx、 Manhattan、 Queens、Brooklyn、 Staten Islandの5つの地区からなる。ニューヨーク州全体の人口は約2000万人。初期の頃、特に感染が拡大したのはウェストチェスター郡(市から電車で2時間程度の郊外の街)。

1. 状況推移

日付 市の感染者数 州の感染者数 状況
2020/03/01 1 1 ニューヨーク州初の感染者が確認される(イランから帰国したニューヨーク市に住む女性)[1]
2020/03/07 12 105 知事:緊急事態宣言[2](外出禁止ではなく、今後高騰すると予想されるマスクや衛生品などの価格調整をする権限を知事が持つなど)。在宅勤務や人の集まるところは行かないことを推奨。
2020/03/09 19 142 オフィスが閉鎖開始、在宅ワークへの移行、大学もオンライン授業への移行を発表。
2020/03/10 36 173 知事:ニューヨーク州ウェストチェスター郡で特に感染者が増えている街を封鎖[3]
2020/03/12 95 325 市:緊急事態宣言[4]。500人以上のイベントは中止、それ以下は半分の参加者にするよう要請。ブロードウェイの劇場閉鎖[5]
2020/03/13 154 421 大統領:国家非常事態宣言[6]。知事:ドライブスルー型の検査施設を開始する旨発表[7]
2020/03/14 329 729 大統領:欧州26か国からの入国禁止措置[8]。州で初めての死者が確認される[9]
2020/03/16 463 950 市:レストラン、バー、カフェを閉鎖し、テイクアウトとデリバリーのみとすることを発表[10]
2020/03/17 644 1374 知事:COVID-19による隔離を余儀なくされた人に対して有給休暇を使えるようにする[11]
2020/03/18 1339 2382 大統領:米国とカナダの国境を一時閉鎖することを発表[12]
2020/03/19 3615 5298 政府:国民に対して全ての海外渡航を中止するよう勧告[13]
2020/03/20 5151 8516 知事:New York State on Pause (全ての不要不急なビジネスや集まりを禁止すること)を発表[14]
2020/03/22 10280 15168 知事:州内のコンベンションセンターや大学を病室として使用することを発表[15]
2020/03/24 - - 知事:ニューヨーク州の感染数ピークは2週間後と予想[16]。大学は5月末に行われる予定であった卒業式の延期を発表。
2020/03/30 36221 66497 1,000程度の病床が提供可能な海軍病院船(USNS Comfort)がニューヨークに到着[17]
2020/03/31 41373 75795 セントラルパークで野外病棟が設置される[18]
2020/04/05 64803 122031 政府:CARES act[19](経済的な補償に関する法律)施行。
2020/04/15 108363 213779 知事:全てのニューヨーカーに公の場でのマスク着用を強制[20]
2020/04/16 111576 222284 知事:外出禁止令を5/15まで延長[21]
2020/04/20 132467 247512 知事が大統領にエッセンシャルワーカーに対する補償(Hazard Pay)を要請[22]
2020/04/24 141754 263460 知事:1日の新たな感染者数が減少し、ピークは過ぎたと見ている。感染者数のさらなる減少を待ち、必要性と感染リスクを考え少しずつ州の活動を再開していく見通しであることを発表[23]

2. 新型コロナウィルス感染症への対応について

大学・学生生活の状況:
大学では市内の感染者が20人のころに授業、インターンシップ全て遠隔で行うことを取り決めた。3月下旬の春休み明けには寮に住む学生全員へ退寮の要請を出した(医療崩壊が見込まれる市内で医療機関として寮を提供するため)。学生の中では授業が全てオンラインになったことにより、学びの質が落ちたとして学費の部分的な返金や、一律にpass/fail式の評定に切り替えることを大学側に要求する署名運動が見られる。私のクラスメイトからは、退寮させられた学生の中には家庭内暴力やホームレスであるなど大学が唯一安心安全な居場所だった人もいるだろうと、そのような学生を懸念する声も聞かれた。その他、コロナウイルス感染拡大の影響で、採用活動を一旦停止している企業・団体が多く、夏のインターンシップや就職先を探す学生は苦難している。

情報発信:
クオモ州知事の情報発信の内容・方法に支持が集まっている。毎日の記者会見で、データから導き出される決断をわかりやすく伝え、わかっていること・わかっていないことを隠さない透明性のあるコミュニケーションを徹底していることがその理由として挙げられる[24]。「責めるなら自分を責めてくれ。自分が全責任を負う。」や、「一人一人の自由はあるけれど、他人に対する責任も一人一人担っている。」といった発言[25]で、今は我慢して家にいる時だというメッセージを繰り返し伝えている。また、インスタグラムを使い、#IStayHomeForチャレンジ[26]を自ら開始し、ジェニファーロペスをはじめとした有名人も巻き込みながら、特に感染や重症化リスクが低いとして軽率な行動が見られる若者に対して、大切な誰かを守るために家にいる必要があることを強調していた。

政治・経済:
全国でアメリカ史上最大の2200万人[27]の失業者がすでに出ているが、政府はCARES actにより失業手当や国民全体に景気刺激策(stimulus checks)として1200USDの配布を行なっている。ニューヨーク州でも、学校が閉鎖したために家で子供の世話をしなくてはならず、仕事ができない人への補償[28]や失業手当はなされており、加えて、外出禁止令に伴い、仕事が普段通りにできず家賃が払えなくなった人を家主が追い出すことができなくする措置[29]も取られている。また、最近では州における経済活動の再開に向けて検査を増やすための施策が打ち出され、特に死亡率の高い黒人やヒスパニックの住む地域での検査数の拡大も目指している[30]

COVID-19により、世界各地で家庭内暴力の相談案件が増えている[31]ことやニューヨーク含めアメリカでは黒人の死亡率が高い[32]など、パンデミック以前から社会的に差別・排除され、脆弱な立場に置かれている人たちがこの感染症に一番に苦しめられている現実がある。すでにあった社会問題がより可視化されたことをきっかけにその問題解決が進むことを願っている。例えば、クオモ州知事はこのパンデミックを機により良い社会づくりを目指したReimagine New York Task Forceを結成し、社会格差や公共交通機関、住宅、治安の問題を解決していく方針を4月20日の記者会見で発表している[33]。ニューヨークでは毎日午後7時にはエッセンシャルワーカーの人たちへの感謝を表して窓から拍手したり、鍋を叩いたりしているが、エッセンシャルワーカーに加え、教師などこれまで低賃金で働いてきた人たちが「なくてはならない存在」という認識ができたことで、彼らの所得を上げるべきといった声もある[34]。そういった社会の公平性が進むことを期待している。さらには、世界中で人の移動や都市活動が大幅に制限されたことにより大気汚染や温室効果ガスの排出といった環境問題が改善された[35]。その一方で、同じ理由で原油の価格がマイナス[36]になったり、オーストラリアでは大手の航空会社が倒産[37]したりと産業によっては経済的に負の影響を被っている。今後、地球環境に配慮したライフスタイルに切り替わっていくことが望まれるなか、こうした産業に従事している人々の命、生活をいかに守るかをこれを機に私たちも考えていけたらと思っている。

(ニューヨーク大学国際教育修士課程2年 横井 裕子)

ヨルダン

1. 新型コロナウィルス感染症に対するヨルダン政府の対策[a]

日付 状況
2020/03/02 ヨルダン国内で初の感染者が1名報告される[1]
2020/03/13 当該感染者が退院し、政府は国内感染者ゼロを宣言する[2]
2020/03/15 教育機関(幼稚園、学校、大学等)を閉鎖する[3]
2020/03/17 貨物輸送を除いてすべての国境を封鎖する[4]
2020/03/18 不要不急の外出、県をまたぐ移動を禁止する[5]
2020/03/21 状況外出禁止令を発令(違反者は1年以下の禁固刑)[6]
2020/03/25 小規模食料品店の営業再開を許可(午前10時から午後6時まで)[7][b]
2020/03/30 銀行の基礎的なサービス再開を許可(午前10時から午後3時まで)[8]
2020/04/03 包括的外出禁止措置により24時間の外出を禁止[9]
2020/04/04 国境封鎖はラマダン後(5月下旬)まで続く見通しを発表[10]
2020/04/10 包括的外出禁止措置により10日、11日にかけて48時間の外出を禁止[11]
2020/04/13 スーパーマーケットとモール内の食料品店の営業再開を許可[12]
2020/04/17 包括的外出禁止措置により17日、18日にかけて48時間の外出を禁止[13]
2020/04/24 包括的外出禁止措置により24時間の外出を禁止[14]
2020/04/24 ラマダン開始(期間中の外出は午前8時から午後6時まで)[15]
2020/04/26 レストランとスイーツ店合計209軒の営業を許可(デリバリーのみ)[16]
2020/04/29 公共交通機関を稼働率50%以下の範囲で許可[17]
2020/05/06 娯楽施設等の一部例外を除き全ての経済セクターの操業再開を許可[18]

[a]国内初の感染者が報告された3月2日以降の、主に移動制限や商業活動に関するものを抽出
[b]買い物に際しては16~60歳の者による徒歩での外出のみ可能とした
図1. ヨルダンにおける新型コロナウイルス感染者、治療中患者、回復患者、死者の推移[19]

2. ヨルダン政府による国民の移動規制の特徴および所感

ヨルダン政府による国民の移動規制の特徴はその「早さ」と「強さ」にある。ヨルダン政府は国内感染者がゼロであった3月14日に、3月17日から国境を封鎖すると発表した。また国内感染者が50名に満たない3月17日には防衛法の適用[c]を発表し、3月18日からの外出制限を発表した。3月20日には、3月21日に外出禁止令を発令して国民の外出と移動をより厳格に禁止し、国内のすべての経済活動を凍結することを発表した。その後3月25日に小規模食料品店、3月30日には銀行の営業をそれぞれ一部許可するも、車両の使用を原則禁止することで国民の移動範囲を制限し、各店舗における利用者の社会的距離の確保(Social Distancing)を徹底した。4月以降も毎週末は包括的外出禁止措置により厳格なロックダウンを実施した。これらの対策が感染爆発の阻止に寄与したと考えられ、日ごとの新規感染者数は3月26日の40人をピークに減少に転じ、4月10日以降は10人未満に抑えられている。退院患者数も増え、5月6日時点での治療中患者数は100名を下回っている[d]

ヨルダン政府による対策の「早さ」と「強さ」の要因を以下の3つの観点から考察する。一つめは「難民」である。ヨルダンの人口はおよそ1,000万人[20]だが、約220万人がパレスチナ難民[21]、約67万人がシリア難民、約7万人がイラク難民[22]と、難民がおよそ3割を占める。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が国内で難民キャンプを運営している。キャンプ内は人口密度が高く、医療体制は脆弱である。またキャンプの内側と外側は厳密に分断されてなく、人の出入りも激しい。多くの難民を抱えるヨルダンとしては、キャンプ内にウイルスが持ち込まれ感染が拡大することを防ぐことが、早期に対策を打ち出した目的の一つであったと推測する。

二つ目は「国王」である。ヨルダンは国王が元首であり、国の緊急事態時には国王令に基づいて「防衛法」を適用することができる。これは公共の安全および国家の防衛のため、国民の行動を首相が制限することを認めるものである。緊急時において国王の意思決定がすみやかに国政に反映されたことが、ロックダウンも含めた各種の厳しい対応に繋がったと考える。

三つ目は「軍および警察」である。ロックダウン等の強力な政策を実行するため、ヨルダン軍は国境や陽性者隔離施設の警備に当たった。ヨルダンでは国防費がGDPの4.9%を占め、GDPに占める国防費の割合では世界上位10カ国に入る[23]。兵力は約10万人と[24]、国民の100人に一人が軍隊に所属しており、総人口に占める兵力の割合では米国を上回る。一方で警察は外出禁止令の違反者を取り締まる等、国民の行動を厳しく監視した。外出禁止令の発令後2日間で500人以上の違反者を取り押さえている[25]。ロックダウンをはじめとするヨルダン政府による強力な政策が実行力を伴った背景には、強力な軍と警察の貢献があると考察する。

[23]The Economist「世界統計年鑑2019」Page.82 「国防費の対GDPが高い国」より
[c]以後、国民の移動規制を含め、政府による新型コロナウイルス対策はこの防衛法に基づいて行われている
[d]5月6日、ヨルダン北部マフラク県から新規感染者が報告されており、今後の感染者の再増加が懸念される

※2020/5/6現在
※投稿の内容は寄稿者個人の見解によるものであり、所属組織とは一切関係ありません。

(JICA海外協力隊 藤原 亮太)

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