2024.2.22 2月フォーラム 「諸外国のデジタルガバメントと日本の取り組み」

講師:楽天渉外統括本部Global Intelligence Group Manager 松尾 愛子氏
略歴:2012年慶應公共政策専修コース修了後、船井総合研究所にてシニアエキスパート•グローバル担当者として7年間、日本全国の中小企業経営者向け経営コンサルティングに携わる。その後、東京オリンピック関連事業の国際関係担当を経て2021年より楽天グループ•渉外室及び新経済連盟の仕事も兼務し主に海外政府との渉外に従事。その後2024年5月まで、デジタル庁国際戦略チームに出向し、G7,G20,大臣外遊のサポート、大臣スピーチの作成、各国デジタル関連省庁との渉外関連業務を担当。 学生時代は5年間参議院秘書インターンに従事するとともに、KIPの設立時より委員会に深く関わり活躍。KIP創成期メンバー。
【スピーチと質疑応答】
松尾氏のご講演では、海外と日本におけるデジタル化の進展の差異に関してご説明いただいた。例えば、エストニアはデジタル社会のトップリーダーとして知られ、2001年にはX-Roadと呼ばれる、日本でいうマイナンバーに相当する電子政府プラットフォームが開発された。現在では投票、住民票の取得、結婚・離婚届の提出など全ての行政手続きをオンラインで行うことが出来る。ウクライナは2019年にDiiaというモバイルアプリケーションを開発し、行政手続きのオンライン化を行った。その他、フィンランドやアルメニア、インド、サウジアラビアなどでもデジタル化が進められている。日本での変革に関しても過去5年間を振り返ると、キャッシュレス決済やマイナンバーカードの普及、GIGAスクール構想の実現などが挙げられる。松尾氏は近年各国のデジタル化が著しいからこそ、海外の動向を知ったたうえで、日本にとって大事なものを海外との対比で知りながら経営や政策決定に活かしていくことが必要なのではないかとおっしゃっていた。質疑応答では日本のデジタル人材不足への対応方法、高齢化社会である日本におけるデジタル化の推進方法、デジタル化を推進するインセンティブはどこにあり、誰がデジタル化を主導しているのか、それらは各国異なるのかなどが話し合われ、白熱した議論となった。
【全体討論】
討論テーマは「日本の教育分野において今進めるべきデジタル化とは」であり、様々な観点から議論が交わされた。特に焦点となったのは、デジタル化に対する生徒と教師の対応、教育でのデジタル化推進に伴う影響や課題であった。教育においてデジタルを上手く活用するためには、生徒と教師の双方がデジタルリテラシーを養うことが大切であるとの意見が多かった。AIによる添削をはじめ、授業においてAIやデジタル技術の活用がされつつあるため、必ずしも教師が直接指導しなくても自分で勉強できる環境は整ってきている。しかし、教師は学校の管理者という役割のみならず、教師自身の多様な背景を活かして、生徒の印象に残るような授業を行う、生徒と人間味のある対話が出来るという役割・存在意義があるため、デジタルのみでは補えない部分もあるのではないかなどの意見もあった。
【全体私感】
教育分野におけるデジタル化を考えた時、私はタブレットの使用、オンライン講座の活用を通して学生側がデジタルリテラシーを高めることが大切で、それが効率的な勉強に繋がるのではないかと考えていた。だが、教育環境を鑑みると、英語や数学でAIを活用した授業が実施されたり、GIGAスクール構想が上手く実現できている学校もあれば、教師がデジタルに詳しくないとタブレットを上手く活用できず、学習のしづらさを感じたという学生の意見もあり、学校ごとにデジタル化の進捗度合いはさまざまであると感じた。したがってデジタル化の推進には生徒と教師の双方がデジタルリテラシーを養いつつ環境設備も整えることが大切であると考えた。その上でデジタル技術では補えない、生徒と教師、生徒同士の対話や、学習のしづらさを感じる生徒への個別フォローなどを重視することが大切なのではないかと思った。
東京女子医科大学医学部6年 小川 真依