2024.1.12 1月フォーラム 「SNSと若者: 2024年の選挙から考えるSNSの功罪」
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【背景】
2024年は、「石丸旋風」が生まれた都知事選や、選挙期間中に候補者のアカウント凍結 が起きた兵庫県知事選挙、SNS広報に力を入れた国民民主党が躍進した衆院選や、トラ ンプ氏が再選したアメリカ大統領選など、国内外で選挙とSNSの関係をめぐる問題がたび たび取り沙汰された。選挙のたびに大きな存在感を発揮するSNSにおいて、選挙候補者と 有権者の発言は法によって規制されるべきだろうか。
【グループ討論と全体討論】
冒頭に委員会から、「偽情報」「誤報・誤情報」などのキーワードの確認や日本における法 制度の現状について共有があった。討論を始める前に会員の意見に従って賛成と反対に 分かれ、双方から安全性や言論統制の恐れなどいくつか代表的な理由を述べた。その後 各グループごとのブレイクアウトルームで意見を深め、最後に全体での議論を行った。 賛成派のブレイクアウトルームでは、SNSの収益化を最大の問題とし法規制による対策を 考えつつ、候補者と有権者の違い、偽・誤情報の判断主体など、様々な方面へと議論を 広めていった。テレビや新聞にあるのと同様の規制がSNSにも必要であるし、既に部分的 に規制は存在するが、「今は上手く機能していない」とまとまった。 全体討議では互いの主張の理由を説明していくなかで、より多様な意見が聞かれた。反 対派の意見として、間違いを訂正できるレジリエンスのある議論の場の担保、ユーザーのリ テラシー教育の優先、SNSではできない取材を行うマスメディアの責任、プラットフォーマ ーを監視することの実現可能性などが挙げられた。終わりに海外事例を検討し、日本の状 況に合わせた対応策を考えることの必要性が示された。
【全体私感】
昨今の選挙をとりまくポピュリスティックなSNS活用から、私は「法規制すべき」という賛成の 立場を取っていた。しかし法規制により、言論の自由や中小政党の意見表明の場が損な われる恐れがあることを知り、平等な発言の機会を重視するのであれば法規制をすべきで はないのかもしれない、と思うようになった。 しかし言論の自由は人を傷つける自由ではないし、声の大きい人の意見だけが力を持つ ようなSNSであり続けるのであれば、レジリエンスがあれど健全な言論空間とはいえないだ ろう。 参加したのはほとんどが大学生だったが、高校生会員に学校でのリテラシー教育の現状 を共有してもらい、アラムナイの方からは現場でのSNSの監督責任や収益化への疑義など をお伺いできたことも興味深かった。また、海外経験を持つ人が選挙とSNSについて現地 で見聞きした実例を知ることができたのも非常に面白かった。多様な人々が集うKIPだから こそ生まれる議論ができたことは意義深いと思う。
早稲田大学教育学部4年 樋口実波