2024.9.21 9月フォーラム 「Energy Geopolitics in a Pacific Century: The Trilemma framework and Japan's path forward」

講師:Mr. Hunter McDonald

【スピーチと質疑応答】

今回のフォーラムでは、エネルギー資源が乏しく、再生可能エネルギー技術に必要なレアメタルも外国に依存する日本がどのようなエネルギー政策を選ぶべきか、エネルギー産業を取り巻く産業を講演で伺ったあとに議論した。講演では、日本が安全保障、持続可能性、経済性のジレンマならぬ「トリレンマ」を抱えており、エネルギー分野における最適な政策選択の難しさを学ぶことができた。 他にも、講師のMcDonald氏からエネルギーに関する興味深い話を聞くことができた。例えば、GAFAの持つデータセンターの電力需要増加などに伴い、今や世界の電力需要の2〜4%を使用していること、日本は米国に比べて政権交代が送りにくい分エネルギー問題に一貫した取り組みが行いやすいという指摘は、エネルギーをビジネスや政治といった他分野へと繋ぐ、興味深い視点だった。

【全体討論】

すべてのエネルギー資源は完璧ではない。McDonald氏が各エネルギー資源の強みと弱みを説明した後、「日本のエネルギー政策は何を重視するべきか?」というテーマで議論した。話題は原子力発電や日本が高いポテンシャルを持つ地熱発電、そして最先端技術である核融合発電にも及び、環境や住民への負荷、エネルギーの持つ政治的なパワーなど多くの要素を考えながらの討論が行われた。

【全体私感】

私は日本が抱える「トリレンマ」の中でも「安全保障」を、他の経済性や持続可能性と比べて重要な分野であると考えた。なぜなら、日本は豊富なエネルギー資源や電力貯蔵を有していないからである。カーボンニュートラル達成の目標年は2050年であり、エネルギー技術を革新するための時間はまだあるといえる。しかし、この不安定な時代において、国家の生命線の1つであるエネルギー資源は他国への優位性を得るための容易な標的となり得る。実際の例として、ロシアからドイツへの液化天然ガス(LNG)の輸出停止が挙げられる。確かに、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行は必要であるが、それは再生可能エネルギーの技術に必要な希少金属において、特定の国への依存リスクを高める。このリスクを軽減するため、日本は再生可能エネルギーの割合を急速ではなく段階的に増加させるべきであると考えた。また、新しい技術が開発され、他国の天然資源への依存が少ない状況になるまでは、原子力発電を一時的な電源として再稼働させるほうが日本にとって良いのではないかという意見が全体討論では多く聞かれ、私もそれに賛成を示した。例えば、現在日本はペロブスカイト太陽電池という新しいタイプの太陽電池を開発している。これは日本がその主原料の1つであるヨウ素を生産できるため、比較的資源独立性の高い電力源になりうる。しかし、実用化までまだ年月がかかるという話も聞くため、それまでの間という条件付きで、原子力発電を一時的に使うという案も考えられるだろう。一方、当然ながら原発のリスクや核廃棄物処理問題などの現実的な問題を参加者から提示された。国際情勢と技術の進歩の両面を見ながら、今後もこの問題について考えていきたいと、改めて感じさせられた。 最後になりましたが、スピーカーのHunter McDonald様、貴重なご講演をありがとうございました。

東北大学2年  阿彦鼓太郎

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