2024.10.19 10月フォーラム 「ウクライナ・ロシア戦争を通してみる今後の国際情勢:日本として何ができるか」
講師:橋本 宏氏 元大使 外務官僚
略歴:1964年に一橋大学法学部卒業後、外務省入省。在モスクワ、ロンドン、ワシントンなどの日本大使館などの勤務を経て,1998年から駐シンガポール大使、橋本内閣で創設された沖縄大使を務め、駐オーストリア大使などを歴任された。現在は文筆・講演活動を通じて外交問題に携わる傍ら、2024年3月には「元外交官が大学生に教えるロシアとウクライナ問題―賢い文化の活用」を執筆されている。
【スピーチと質疑応答】
今回のフォーラムでは、ロシアウクライナ戦争を念頭に、ロシアに対する世界各国や日本としての動きを講演で伺い、その後の討論会で議論することができた。はじめの橋本様の講演でロシアとウクライナの歴史認識の違いを聞いたが、キエフ大公国の後継を称するロシア連邦と、ソ連崩壊後に700年ごしに独立を果たしたというウクライナの歴史認識の違いはやはり大きいものなのだと改めて感じた。より現実の戦闘に関連した話として、国連やNATOの効果や改善点などの話も伺うことができ、まず国連安保理の機能不全に対する対処の仕方に関してはあまり存在せず、総会決議で対応するのが現実的であること、また国連は集団安全保障体制で、集団内の国家による他国への武力攻撃を抑止し、制裁を加えるものである一方、NATOは集団的自衛権を互いに行使する国家の集合体であり、集団外の国家による集団内の国家への武力攻撃に対し制裁を加えるものであるため、NATOは国連の代わりにはなり得ないということを学んだ。日本のこれからの立ち位置として、中堅国家を目指すべき、具体的にはロシアとウクライナが戦争をしている間は、ウクライナの街の復旧へ、和平成立後はウクライナの復旧へと支援をすることで立場を作っていくべきだということは非常に興味深かった。それと同時に市民一人ひとりによるアプローチも可能だということも仰っており、私自身にできることとしてはまず戦争報道を追いかけること、それをもとに日本としてはどのような立場を取る必要があるかを考えると同時に、寄付などをしていくことかと考えた。
【全体討論】
講演後の討論では、「長引く戦争状況におけるダメージを考え、諸外国は軍事的サポートをやめるべきか、あるいは将来を見据え、今日のダメージよりも未来の平和を考えてサポートを続けるべきか」というテーマで討論を行い、私の意見としては、和平を結び、平和を取り戻すことが大事であって、これまで2年半のロシアウクライナ戦争でウクライナ側に民主主義国家が支援を続けてきて、和平を結べる状況になっていないということを鑑みると、ウクライナへの支援を中断して、多少ロシアに有利な形となっても和平を結び平和を取り戻すことが良いという意見だった。反対側の意見としては領土保全の観点で侵略をおこなっているロシアを許す前例を作ってしまうと、一時的に平和が訪れたとしても長期の視点で考えた場合に侵略国家を利する形になるため良くない、という意見が多く見られた。個人的に、支援を続けるべきだという人の中に、ロシアによる虐殺や子供の連れ去りという非人道的側面に対して反対の意を表すために、ウクライナへの支援を続けるべきだという意見は少なく、人権保護というよりは領土保全という観点からの意見が圧倒的に多かったのは、印象的だった。 最後になりましたが、スピーカーの橋本宏様、貴重なご講演ありがとうございました。
自治医科大学医学部2年 藤本脩太郎