2021.7.26 7月フォーラム 「グローバルヘルスの潮流:新型コロナウイルスで変わる国際保健のパラダイム」

坂元 晴香氏

経歴
札幌医科大学医学部から東京大学大学院国際保健政策学教室博士課程へ。聖路加国際病院勤務後(内科医)、厚生労働省で勤務。ハーバード公衆衛生大学院修士号取得。東京女子医科大学熱帯学・国際環境教室非常勤講師。

内容紹介

【スピーチと質疑応答】
坂元先生のご講演では、まずグローバルヘルスという概念がどのような過程で生まれ、世界規模で定着してきたかという点についてご説明をいただいた。新型コロナウイルスのパンデミックが発生する前には、多くの人たちにとって難民キャンプとしての役割が強かった。しかし、1993年からヘルスケアはコストではなく、投資の対象であるという概念が生まれ、開発の観点から医療に取り組むと言う考え方が生まれたという。その後、2015年までに達成すべき8つの目標を掲げたMDGsや2030年までに達成すべき17の目標を掲げたSDGsにも人々の健康に関わる目標が盛り込まれた。特にSDGsには、エイズやマラリアなど感染性疾患から、虚血性心疾患や脳卒中など非感染性疾患、メンタルヘルスに至るまでより多様な病気に対しての具体的な目標値が示されていることを伺った。
次に我々は坂元先生より、国際保険における大きな変化と題して、グローバルヘルスに対処するプレイヤー(投資者・施策の実施者)が増加していることをご教示いただいた。WHOやUNICEFに代表されるような国連機関を始め、The Global Fundなどの官民パートナーシップ、主に先進国が途上国に対する援助を行う形で行われる二国間協力、そして、国境なき医師団、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などの独立団体、民間団体などがグローバルヘルスのプレーヤーとなっている。さらには中国やインドなど新勢力も台頭している。坂元先生は今後これらのプレーヤーがそれぞれの特徴的な強み・弱み、そして時には利害関係のバランスが絡み合い、人道的なだけではなく経済的・政治的な側面も考慮されながらグローバルヘルスが捉えられていくだろうとお話されていた。
質疑応答の時間には新型コロナウイルスのパンデミックにおける、各国のワクチンのデリバリーについてやデータシェアリング、イノベーションについてなど、多様な観点からグローバルヘルスを考察する質疑応答がなされた。

【グループ討論と全体討論】


本フォーラムではKIPの通例の討論とは異なり、坂元先生ご提供のロールプレイング形式の討論会を実施した。参加者は先進国、新興国、途上国のいずれかの代表として、途上国において発生した感染症のワクチン開発・供給を先進国、新興国との交渉を通じて獲得していくというものである。終盤には具体的な国名を当てはめた上で同様のテーマで議論した。これらを通じて現実の国際社会におけるグローバルヘルスの問題には、一元的には語ることのできない多様な利害関係が存在することを体感した。

【全体私感】
今回のフォーラムを通じて、グローバルヘルスとは様々な国の利害関係を巻き込んだ、一元的に語ることのできない問題であることを痛感した。新型コロナウイルスの蔓延によって健康の重要性、その維持の難しさに人類が改めて直面した今、改めてその事実を認識し、全世界の健康を実現するべく行動すべきだと感じた。

(慶應義塾大学商学部4年 北野 裕則)

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