2021.6.26 6月フォーラム 「日本の経済外交」

6月のフォーラムは、対面とオンラインのハイブリッド形式で開催した。現役の外務省経済局長である四方様より、菅総理の米国訪問やG7サミットの具体的な内容を伺った。日本は今後どのような分野でG7においてイニシアティブをとっていけるかについて参加者間で議論をし、四方様よりご講評を頂いた。

四方 敬之氏

経歴

1986年京大法卒、 ハーバード大学ケネディー行政大学院修士(MPP)。 1989年在米国日本大使館プレス担当官を皮切りに、1999年にOECD日本政府代表部一等書記官、2012年に在英国日本大使館政務担当公使、2018年からは駐中国特命全権公使、2019年には米国公使として再度米国へ赴任。国内では国際報道官、北米局北米第二課長、国際法局経済条約課長、内閣副広報官、大臣官房人事人事課長、アジア大洋州局参事官等を経て、2020年7月より現職。

内容紹介

【スピーチと質疑応答】
四方様のご講演では、まず4月に行われた菅総理の米国訪問の際、菅総理とバイデン大統領の間で立ち上がった「日米競争力・強靭性パートナーシップ」についての解説があった。デジタル分野における競争力・イノベーションの点では、安全でオープンな5Gネットワーク推進や、中国が急成長を遂げている半導体分野のサプライチェーンの保護・育成に関してお話しいただいた。コロナ対策・グローバルヘルス・健康安全保障の点では、新型コロナウイルスワクチンの公平なアクセスと途上国への分配を目指すCOVAXファシリティを具体例に挙げ、詳しく教えていただいた。気候変動・グリーンエネルギーの点では、日本が力を入れている水素エネルギーや、世界全体で取り組む必要のあるカーボンニュートラルに関してお話を伺った。
つい先日英国で開催されたばかりのG7サミットについても詳しく伺った。G7サミットのテーマである「より良い回復」の下、具体的にどういった議論や合意がなされたのかを学ぶ機会となった。また、日本が結んでいる様々な経済連携協定に関して、それぞれの特徴や意義を知ることができた。日本は数々の重要な経済連携協定に携わっており、その立場を活かして国際社会におけるプレゼンスを高めていきたいというお話は、後半の討論テーマにも結び付くものであった。  質疑応答の時間には、日本の経済外交に関心を持つ学生から多数の質問があり、四方様に丁寧にお答えいただいた。半導体の分野で中国が台頭してきていることを受け、日本や米国の政府がとるべき対応についての質問が出ると、産業の多くは民間企業のイノベーションにより成長していくため政府の補助金に依存した体制では競争力に限界がきてしまうとのお話があり、官民連携の重要性が強調された。

【グループ討論と全体討論】


討論テーマは、「2023年の日本主催のG7サミットに向けた、日本の新たな経済外交のイニシアティブ案」であった。四方様のスピーチを参考に、5名程度のグループに分かれて意見を出し合った。日本が国際社会をリードできる分野は何か、G7の国々と協調する意義のある分野はどこか、といった活発な討論が行われた。各班の考えを全体に共有したのち、グループ間で質問が飛びかう全体討論が行われた。保健、グリーンエネルギー、モノづくりなど、幅広い分野から意見が出された。四方様からは、もっと自由で創造的な発案ができるとより良かったとのご講評をいただき、参加者一同はっとさせられた。

【全体私感】
経済外交に関する事前知識が少なかった私には難しい内容であったが、最前線で活躍される四方様のスピーチや、KIP会員から出る積極的な質問や意見に刺激を受けた。G7サミット直後にこの話題で討論する機会をいただけて、大変勉強になった。今後も日本の経済外交に関連するニュースに敏感になり、今回の学びを無駄にしないための努力をしていこうと思う。

(東京大学理科三類2年 榎本 美咲)

戻る