2021.4.10 4月フォーラムⅠ 「2021年ユースサミット会議に向けて:G7及びG20ユースサミット(Y7・Y20)日本代表との集い」

4月フォーラム開催。今回は前半、ユースサミット日本代表の渡邊哲氏(Y7)、森田恵美里氏(Y20)と、その関係者の佐座槙苗氏による、世界の環境問題と若者の関係性についての話を伺い、質疑応答の後、危機対応・資源活用・温室効果ガス削減に関する全体議論を行なった。後半、KIP会員のみで「自動販売機を削減すべきか」をグループ及び全体討議をして、4月フォーラムを終了した。

渡邊哲氏、森田恵美里氏、佐座槙苗氏

経歴

渡邊哲氏:経営コンサルティング会社にてサステイナビリティに関わる企業支援やアジアにおける気候変動の研究に従事。Y7においては気候変動及び環境トラックを担当。
森田恵美里氏:Y20日本代表の一人として、サステイナビリティ、気候とエネルギートラック担当。現在プリンストン大学経済学部在籍中。討論に参加。
佐座槙苗氏: 気候変動について議論するMock COP26 グローバル・コーディネーター。

内容紹介

今回のフォーラムはスピーカーの時間の都合により、前半はスピーカーたちとの話し合い、そして後半はKIP会員のみで行われた討論会、と通例のフォーラムとは異色のフォーラムとなった。そのため本フォーラムはスピーチ→質疑応答→グループ討論①→総評→グループ討論②→全体討論の順で行われた。

【スピーチ内容】
3名の方から、日本と世界における若者と環境問題の関係性について包括的にお話を伺った。まず渡邊氏から、どのような環境問題に対してどの程度の割合の日本の若者が関心を持っているのか、彼らは対策としてどのような施策が有効と考えるかという点に関してアンケート結果をもとにスピーチを伺った。次に佐座氏が、環境問題に直接影響を受ける次世代である若者が国際決議の場に存在しないという問題点、その解決策としてのMock COP26のロビイング活動について、またSDGsの根本としての環境保護原則、他国との連携不足など環境問題に取り組む上での日本の問題点について報告された。

【グループ討論①と全体討論】
上記の知識を踏まえ小グループでのディスカションが行われた。私たちのグループでは、現状の問題点としては世界の環境問題に関し自分ごとであるという意識がなく日本における異常気象に少し関心がある程度である点、必要性としては国全体で環境への意識を教育・メディアでの取り上げ・官民共同等の手段によって高めること、あるべき姿としては強いリーダーシップを発揮できるという政府の性質を生かして明確な環境問題解決のビジョンを国民に共有すること・企業に経済的インセンティブを付し協力を要請する等企業との連携をしっかりと図ることなどが挙げられた。他人事意識を変革しかつ世界の環境問題解決に貢献する具体的な施策として、環境税の導入・日本への環境難民の受け入れの是非なども話し合われた。
グランドディスカッションでは炭素税の導入や若者の意識向上、中枢部だけでなく末端の人々まで環境意識を浸透させる必要性、企業や個人に対してマインドセットのみならず経済的実利を与え協力姿勢を取らせること、日本人に環境意識が薄い根本原因についてなどの議論が交わされた。講評として、これらの施策を行う際の中心としてはG7などの先進国が予期されるが、施策には現在途上国で燃料採掘等の仕事に従事している人々の経済的保護を忘れてはならないとの批評がされた。

【グループ討論②と全体討論】
フォーラムの後半ではKIP会員のみで「自動販売機を削減すべきか」というテーマで討論が行われた。私たちのグループでは自動販売機を日常的にどのくらい利用するのかという議論から始まり、自動販売機の防犯作用・災害時の給水機能など飲料販売以外のメリットや、マーケティング機会の増加に資するといった企業側からのメリットについても考察した上で、自動販売機による多量の消費電力の問題、ごみ問題解決やペットボトル削減の阻害要因になること、自動販売機を製造する時点で既に多量の資源を消費してしまうこと、都会においては自動販売機の数が飽和状態であることなどのデメリットとの比較衡量を試みました。その結果、それらのデメリットが目立つ都会とメリットの目立つ地方で差をつけた施策を取ること、具体的には地方では現時点から大幅に削減することはせず一方で都市部では削減を行うべきであるということが一応の結論となり、都市部での削減の一案としては自動販売機間に距離制限を設けることが俎上に載った。
グランドディスカションではペットボトルの可否に焦点を当てた議論が白熱した。自動販売機の中身はペットボトルではなくリサイクル可能なアルミ缶を中心にするという施策が提起され、環境意識を喚起するための若者に対する施策として特に若者の集まる街を施策の中心とすること、芸能人などのインフルエンサーを活用しアルミ缶の購入を促していくことなどが議論され、企業側のCSRやESG投資への意識向上についても言及がされた。

【全体私感】
今回のフォーラムを通じて、環境に対する自分の知識や意識の少なさを痛感するともに、直近で自分に被害がなくても長期的に考えれば必ず到来し、また現に他の地域にはその萌芽のある危機から目を背けてはならないということ、また知日派国際人を目指す集団として世界の問題も自分ごととして目を向けて解決策を考え、自分にできることを可能な限り取り組んでいこうとする姿勢の必要性を改めて感じた。また環境問題に限らず問題解決を行おうとする際、その施策によってある課題は解決されてもその施策によって新たな問題に直面してしまう集団の存在(環境問題で言えば燃料資源の採掘従事者や経済状況の厳しい発展途上国など)や、理論的な解決策を考案してもそれを誰がどのようにして実行するのかという現実面を緻密に詰める必要性など、課題解決の複雑さに改めて気付かされた。 ご多忙の中、KIP会員のために貴重な時間を割いていただいた渡邊氏、佐座氏、森田氏に深く感謝申し上げる。

(東京大学法学部3年 横田美鈴)

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