2021.10.10 10月フォーラムⅠ 「アフターコロナの働き方〜正解がない時代のキャリアの積み方〜」

古野 庸一氏

経歴
株式会社 リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 所長。1987年東京大学工学部卒業後、株式会社リクルートに入社。南カリフォルニア大学でMBA取得。キャリア開発に関する事業開発、NPOキャリアカウンセリング協会設立に参画する一方で、ワークス研究所にてリーダーシップ開発、キャリア開発研究に従事. 2009年より現職。著書には『「働く」ことについての本当に大切なこと』、『「いい会社」とは何か』(講談社現代新書)、『日本型リーダーの研究』(日経ビジネス人文庫)など。

内容紹介

【スピーチと討論】
本フォーラムでは「アフターコロナの働き方」をテーマに、多角的なデータや古野氏の実体験を交えたご講演をいただき、合間に参加者間のディスカッションも3回行われた。
古野氏は冒頭、自身の経歴について、キャリア変遷などを中心にした「A面」と体調などプライベートでの出来事やそれに伴う価値観の変化に注目した「B面」に分けて紹介された。さらに、コロナ禍によって、人々のキャリア観が「変化対応力」、「自分らしさ」、「キャリア自律」を重視する方向に変化しつつあるとして、参加者のコロナ禍による価値観の変化について問いかけた。
「働く」ことの目的について、時代や国の発展段階などの外部要因によっても大きく影響を受けることを説明したうえで、個々人によって様々な角度から目的を見出すことができることを示した。この話題の途中では、労働量(≒富)と私生活に対する価値観の対比を描いた「漁師とビジネスマンの例え話」が紹介され、これに対する各自の考え方についてディスカッションも行われた。参加者からは、仕事と私生活のバランスに対する価値観は年齢やライフステージによって変遷するのではないかといった声や、居心地の良い環境にとどまり続けることの是非が問われているのではないかといった意見が挙がった。
講演の後半は、「働く」ことの目的を具体的に考察する内容だった。古野氏は研究結果などを引用しながら、幸福のためにはお金はある程度必要だが、幸福の追求に必要な要素はそれだけではないことを説明した。また、人は働くことで「不幸」を大きく感じることはないが、失業すると大きく幸福感が失われることも示した。これに対し参加者からは、仕事で幸福を感じるためには、仕事の目的の明確化や職場の人間関係が鍵になるとの指摘が出た。
最終的に、古野氏は「幸福の追求手段に『仕事』というラベルを貼っている」という仕事の捉え方を紹介し、この実現のためには、自分自身が仕事をする上でベース(心身の健康や自己決定の習慣)を整えることや、仕事の中で自分の居場所を確保することの重要性を指摘された。

【全体私感】
今回のフォーラムでは、社会人として日々行なっている「働く」という行為に対する、自分の中での意味付けを改めて考えさせられた。特に意味付けなど行わずとも、大学を出て就職をすれば自動的に「働く」という行為を毎日繰り返すことになるが、同じ行為でも自分の中で働くことへの「哲学」を持っていれば、仕事を通じて得られる学びや喜びは確実に大きくなり、ひいてはそれが天職となる可能性も高まると感じた。私自身は就職後、忙しい日々の中で「働く」ことへの意味付けが薄らいでいく実感があったが、これを機に一度腰を据えて内省する時間を設けたい。

(KIPアラムナイ 嶋津 寛之)

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