English

2020.07.18. "Impact of COVID-19 on Australia-Japan tourism"
オーストラリア国立大学・東京大学公共政策大学院修士2年 Sarah Strugnell氏

7月オンラインフォーラム(Reading English Magazine)開催。オーストラリア国立大学と東京大学公共政策大学院の学生であるStrugnell氏をお迎えし、新型コロナウイルスが日本と豪州の観光業に与える影響について論じた英語雑誌を題材に、両国の観光業が有する特徴や、両記事の表現の違いについてお話しいただきました。後半は、「新型コロナウイルスがもたらす日本と豪州のイメージの変化」について、「ソフトパワー」の概念も用いながら、討論を行いました。

Sarah Strugnell氏

略歴

モナシュ大学にて日本学と微生物学を専攻。現在はオーストラリア国立大学と東京大学公共政策大学院の修士課程に在籍中。

内容紹介

7月フォーラムは、KIPの新しいプログラムである、Reading English Magazine (REM) の第1回として開催されました。REMは、ネイティブスピーカーとともに英語雑誌を読み、ゲストの出身国や世界が抱える社会課題について議論するプログラムです。今回は、豪州からSarah Strugnell氏をお招きし、新型コロナウイルスが日本と豪州の観光業に与える影響について議論しました。題材として取り上げたのは、"The Diplomat"に掲載されている "Japan’s Campaign to Revive Virus-Hit Tourism Sector Postponed Amid Cost Controversy"と、豪州の雑誌である"The Monthly"に掲載されている"Tour de force cancellations"です。

まず初めに、Strugnell氏から両記事で論じられている内容や、日本と豪州の観光業が共有する特徴について、プレゼンテーションをしていただきました。"The Diplomat"に掲載されている記事は、SNSを通じていとも簡単に偽情報が広まり、人々の物事に対する見方や認識が変化してしまうことを論じています。新型コロナウイルスの流行する中でも、インバウンドの促進のために、日本政府が旅行費の50パーセントを負担するという偽情報が瞬時に広まりました。他方で、"The Monthly"の記事は、豪州の有名な観光地で観光業を営む人々に焦点を当てています。Strugnell氏は、両雑誌が対象とする読者やテーマの違いに着目し、2本の記事が全く異なる表現を用いていることを指摘しました。すなわち、前者が外交雑誌らしく、形式的な表現を用いているのに対し、後者は豪州の人々の生活に密着し、同国のスラングを用いています。また、Strugnell氏は、日本と豪州の二国間で、人の往来が盛んであることにも触れ、桜の季節やスポーツイベントが開催される時期の旅行、ワーキングホリデー、修学旅行、出張などを例として挙げました。そして、このように気軽に両国間を行き来できるようになったきっかけの一つとして、格安航空会社の伸張が重要な役割を果たしていると指摘されました。プレゼンテーションの後半には、ニュージーランドと豪州の新型コロナウイルス危機への対応を例に、未曽有の事態に直面した際に、政府が一貫したメッセージを発信することの重要性を主張されました。最後には、新型コロナウイルスが観光業へ与える打撃を少しでも緩和するために、中小企業を支援し、地元のものを購入するよう心がけることが大切だとお話しいただきました。

プレゼンテーション後には、質疑応答を行いました。東京五輪を開催した場合の海外の人の動きや、格安航空会社の果たす役割の重要性、日本へ留学していた間のオンライン授業の感想等、幅広いテーマについて意見が交わされました。Strugnell氏は、新型コロナウイルスが流行する中で、日本に留まることを決意した理由の一つとして、医療保険制度の充実を挙げました。そして、滞在先や留学先を選ぶ際に、食や医療など、生活環境の充実度が重要な考慮要素になると述べました。さらに話題は外国人居住者に向けた日本のニュース発信にまで発展し、日本に住む多くの外国人が英語で正確な情報を入手するのに苦労しており、中には不正確な翻訳により誤解が生じる事態もあると指摘されました。

フォーラムの後半では、参加者は2つのグループに分かれ、「新型コロナウイルスがもたらす日本と豪州のイメージの変化」についてディスカッションを行いました。あるグループは、感染症の流行を受けて、旅行者にとっては安全が最大の懸念事項となっているため、接触感染アプリの活用や、個人や少人数でのツアーが促進されるべきだと主張しました。もう一方のグループも、安全は優先されるべきだとしながらも、観光の重要な要素である人と人との繋がりも無視することはできないと指摘しました。人々は常に、人と人との交流を通じて、異なる物語や文化に触れられることを期待しており、それは旅行をするときの大きな楽しみでもあります。新型コロナウイルスの収束の見通しが立たない中では、人と人との接触は避けなければなりません。しかし、このような状況下でも、旅行者に対して「いつでも待っているよ」というメッセージを発信し続けることは大事であると主張しました。

最後に、Strugnell氏から、NewYorkerをはじめとする有名雑誌のみならず、各国や地域の雑誌を読むことは、私たちの視野を広げることに繋がるため、この取り組みを是非今後も続けてもらいたいと、お言葉をいただきました。第1回REMは新型コロナウイルスが観光業へ与える影響や、日本と豪州の二国間関係について考える、素晴らしい機会となりました。豪州への帰国を間近に控える中、KIP会員のために貴重な時間を割いていただいたStrugnell氏に、この場をお借りして御礼申し上げます。

(東京大学公共政策大学院修士1年 石野 瑠花)

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