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2020.05.30『オンライン化浸透によるヒトの移動の変化』

5月オンラインフォーラム開催。今回は、アラムナイ会員の今井哲氏から「緊急事態宣言解除後の人の移動の在り方」についてお話頂き、テレワークやオンライン講義が導入されていく中で、今後国内でヒトの移動がどのように変化するのかを議論しました。加えて、「どうすれば地方にヒトの移動を継続的に促すことができるか?」という観点から、過疎化が進む4県へのヒトの移動企画を立てるワークショップを行いました。

内容紹介

まず今井氏は、”with corona”/”after corona”の世界にて、主に国内におけるヒトの移動を考えるうえで、ウイルスとの共生、生活者のマインドセットの変化、移動形態の変化が重要なポイントになると指摘されました。感染リスクの拡大により、ウイルス対策は長期戦となり、”with corona”を避けられない時代を迎えています。そこで、日常生活において人との接触を減らす取り組みが行われ、サービスや仕事、学業においてオンライン化が急速に浸透しつつあります。一方、このような変化は、私たちにリアルならではの意味を再認識させる効果を持っています。実際、自粛期間中、プライベートな時間、及び対面型コミュニケーションの持つ意義を実感した人は多かったそうです。そうすると、移動形態も、日常的な外出から、ローカル観光やレジャー体験など、目的意識がより明確な旅行へとシフトしていきます。結果的には、移動総量は全体として減少する一方、都会にいなくても生活に必要な情報が入手できるため、働き方や居住環境が多様化していきます。そうなると、特にコロナ終息後は地方・郊外へのヒトの移動が進むとのことでした。

次に、今井氏の発表を受けて、オンライン化で地方へのヒトの移動が進むのか、という点を中心に意見交換をしました。賛同された方々の見方は、仕事の効率化によりワーク・ライフの分離が進行し、半定住(weekend houseの設置など)を求める形でIターン現象が起こるというものでした。これに対して、オンライン化が進展しても、通信インフラや医療体制、移動費用を改善しない限り、地方への移動・定住を促すのは難しいという反対意見があがりました。また、国内での移動を議論する前提として、出入国者の増減をはじめ、国際情勢を考慮する必要があるという見解もありました。

こうした議論を踏まえ、過疎化が著しい秋田・福島・三重・山口の4県に関して、人の移動を継続的に促すための企画立案を、グループに分かれて行いました。ワークショップ形式での討論は、KIPフォーラムとしては初めての取り組みでした。短い検討時間の中で、どの班も、県の地理的特徴や産業構造を踏まえ、観光振興のみならず、企業誘致や国内留学の促進などを通して、リピーターを増やす画期的なプランを練っていました。

そして、各班の発表後、地域の歴史や伝統を尊重しつつ、時代状況に即応した新しいシステムを導入していく方法を全体で議論しました。企業・行政・地域住民など、様々なアクターからなるコミュニティ内での信頼関係を構築したうえで、新旧のバランスをとり、多くの人にとって地方がより魅力的な場所になるような地方改革を進めていく必要があるという話になりました。

かつてオルテガは、『大衆の反逆』の中で、”Together and alone”という概念を持ち出しました。これは、大衆社会に生きる中で、自身の道を見失ってはならないということを指しています。今回のフォーラムを通して、むしろ”Alone and together”という発想を抱くのが大切ではないかと私は考えました。1人1人が、自分と向き合う時間を作り、現状・将来について真剣に考える。同時に、様々な社会変化・社会問題に対して他者と手を携えて取り組んでいく。今私たちには、こうした姿勢が求められているのではないかと思いました。

最後になりますが、お忙しい中、完成度の高いスライドを用いて、今後の展開を力説して下さった今井氏、および有意義な討論の場を設けてくださった委員会の皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

(東京大学法学部3年 川上 晴紀)

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