2017.6.15「トランプ政権とアジア情勢」
元・外務省アジア大洋州局参事官 四方敬之氏
四方敬之氏:京都大学法学部、ハーバード大学ケネディー行政大学院をご卒業後、1986年に外務省に入省。様々な部署をご経験されたのち、アジア大洋州局参事を経て現在は在中国日本大使館公使として外交政策に携わる。
6月フォーラム開催。 今回は、国内外で活躍していらっしゃいます外務省の四方敬之氏と山本茉希氏をお招きし、日本を取り巻くアジア、アメリカを中心とした海外情勢についてお話をいただきました。現在の諸外国の実情や日本との繋がりについて理解を深めることが出来、大変有意義なフォーラムとなりました。以下ではその講義内容や質疑応答、ディスカッションの様子をお伝えします。
まず初めに四方氏より、日中関係や台湾、韓国情勢、日米関係にまつわるお話を頂きました。日中関係では、昨年9月に行われた日中首脳会談の内容を通じ、5つの協力分野、3つの共通課題について伺いました。東シナ海情勢など、緊張の種はいくつかありますが、中国は日本と経済的に縁の深いパートナーであり、人的往来も多く同じ課題を共有する国なのだという実感が湧きました。四方氏の、国際関係では多様なトラブルがあるが、それをどうマネジメントしていくかが重要だというお言葉が印象的でした。また、後のディスカッションテーマとなる一帯一路や、AIIBについてもご説明頂き、中国の現状をよく知ることが出来ました。日米関係については、現在安倍首相とトランプ大統領が親密で、特に北朝鮮問題などで連携していることを安倍総理米国訪問時の成果とともに伺いました。トランプ政権の貿易、外交姿勢についてもお話を頂きました。次に、山本氏からASEANを中心としたアジアの枠組み、各国の抱える課題や日本との関わりについてご講演頂きました。更に文化や言語の異なる諸外国との外交を成功させるために、どのような取り組みが為されているのかという大変興味深い点についても教えて頂きました。
講演後は質疑応答の時間があり、四方氏と山本氏がメンバーからの質問に答えてくださいました。 Q1:日本やアメリカが北朝鮮への制裁を準備しているのとは対照的に中国からの経済制裁が不十分なように思われるが、それはなぜか。 A1(四方氏):中国は北朝鮮が崩壊し、難民が大量に中国へ来ることを懸念している。また、韓国が統一され、在韓米軍が中国に接近する可能性を考えているため、あまり積極的に制裁をしたがらず、アメリカと北朝鮮間の対話を望んでいる。 Q2:山本氏のお話の中にあったASEANの共通理念とはどんなものか。 A2(山本氏):少なくとも日本の姿勢としては自由・民主的・人権の保護を押し出している。濃淡はあれども、これらを大切にし、日本は各国への協力を行なっている。
質疑応答の後は、四方氏より「日本は一帯一路に関与すべきか」というテーマを頂き、ディスカッションを行いました。各班の討論の結論にはかなりばらつきがあり、また関与すべきという意見の中でもどのような仕方で関与するのかという面での差異が見られました。関与すべきとした班の意見では、積極的に加わっていかないと日本が孤立してしまう、中国と協力体制が出来、北朝鮮に対する姿勢を合わせられる、市場拡大のため競合的関与が必要といった意見が見られました。関与すべきでないとした班の意見には、あまり中国寄りの姿勢を取るといままで築いたアメリカとの関係を損なう危険がある、既にある枠組みや国単位での関わりをより大切にしていくことが重要である、政治理念の相違が大きすぎる、などというものが見られました。これを踏まえて、四方氏からはこういった問題を考えるときには、日本が何を大切にしているのか(目的)、そのためにどう取り組んでいくべきなのか(手段)といった2つの視点が不可欠だというコメントを頂きました。
今回のフォーラムは、普段知ることの出来ない外交の今や、政策を考える上で重要な観点について学べる非常に貴重な機会となりました。最後になりましたが、ご多忙の中私どものために時間を割いて講演してくださった四方氏と山本氏にお礼を申し上げたいと思います。この度は本当にありがとうございました。
(倉林かおり)