2016.04.23 KIP Forum “グローバル世界とリーダーシップ”
大八木茂男氏 帝人株式会社取締役会長
4月フォーラム開催。今回は日本化学繊維協会会長、日本バイオプラスチック協会会長、また経済同友会の「社会・経済・市場のあるべき姿を考えるプロジェクト」の委員長などを歴任され、14年より帝人株式会社代表取締役会長を務められている大八木成男氏をお招きし、「グローバル世界とリーダーシップ」というタイトルでご講演頂きました。実業界のトップのおひとりである大八木氏からは、先行きの不透明感を増す現代の世界の捉え方と、そうした環境の中でリーダーがとるべき姿勢について、示唆に富むお話を頂きました。
前半では、現代の日本を取り巻く要素としてグローバリゼーション、デジタライゼーション、ICT、少子高齢化の四点を挙げられ、現代の社会が多様化・複雑化していることを述べられました。中でも、サービスと情報を結びつけるICTという技術は帝人社でも取り組まれている分野であり、実際、人の命にかかわる呼吸器系の医療機器の管理などをなさっているという例を挙げてくださりました。こうした現代においてリーダーはどうあるべきかお話いただき、特に印象に残ったのは、リーダーとは、業務の遂行を管理するマネジャーとは違うというお話です。リーダーはビジョンをしっかりと明示し、実現させる責任に加え、将来のリーダーとなっていくフォロワーを育成していく責任も担っています。さらに、リーダーにはビジョンを実現する戦略と使命感も求められるそうです。その一方で、リーダーを支える良きフォロワーの視点を考えるため、桃太郎の例え話をされました。桃太郎はリーダーとして、犬、雉、猿の三人のフォロワーを連れていますが、それぞれ犬は行動、雉は情報収集、猿は企画の能力を表しています。そして、この3タイプのフォロワーのうちどれが最も重要かというと、犬の行動であると答えられました。なぜなら、何らかの計画を行動に移した時に初めて不十分な点に気付けるため、行動する立場になって考えるべきであるからです。私は、めまぐるしく情報が飛び交い、斬新な発想がイノベーションとなっていく昨今の社会では「情報」や「企画」が重要とされるのではと予想していたので、氏のお話に驚くとともに新しい発見をさせていただきました。
後半では、大八木氏のご講演を踏まえて、「リーダーはフォロワーの意見をくみ取るべきか」という議題でグループディスカッションを行いました。同じ議題の討論でもグループによって、リーダーやフォロワーを務めた実体験から理想的なリーダーの役割について考えるなど、程度問題の議論にならないよう状況を設定する独自の工夫をしていました。多くのグループでは、目的を最もよく理解すると同時に責任を持っているのはリーダーであるから、決定はリーダーの意思に基づいて下されるべきという意見が出ました。一方でフォロワーの意見を汲み取るメリットとしては、フォロワーのやる気向上や、多様な意見から新たな発見が期待できるという意見もあがりました。日々集団の中で暮らし、リーダー・フォロワーとして行動している私たちが、どのような組織が理想的な形なのか改めて考える有意義な機会になったと思います。この場をお借りし、ご多忙の中私たち学生のためご講演をしてくださった大八木様に感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。(尾根田紘観)