2016.10.19 KIP Forum “IoT(Internet of Things)時代の経営思想と哲学について”
千本倖生氏 (株)レノバ代表取締役会長
千本倖生氏:略歴
京大卒業後、日本電信電話公社(現在のNTT)に入社。フルブライト奨学生としてフロリダ大学にて電子工学博士(Ph.D.)の学位を取得。NTTを退社後、第二電電株式会社(DDI,現在のKDDI)を創業し、続いて携帯電話事業(現在のau)、PHS事業(Y!Mobile,現在はソフトバンクに吸収)を立ち上げ、1999年イー・アクセスを創業。2014年レノバ社外取締役に就任し, 翌年8月よりレノバ代表取締役会長に就任。
10月フォーラム開催。今回は、KDDIやイー・モバイルを創業され、現在はレノバ代表取締役会長の千本倖生氏を講師にお招きしました。ご講演のタイトルは「IoT(Internet of Things)時代の経営思想と哲学について」。ご自身の経験を元に起業家としてのあり方についてご講演を頂きました。具体的には起業家としてどのような価値観で社会と向き合ってこられたか、起業に必要だったことなどをお話いただきました。
本フォーラムは二部構成となり、前半は千本氏ご自身の経験を基にしたご講演と質疑応答、そして後半は「起業家に大学教育は必要か」として学生のみで議論しました。
最初のご講演では、千本氏のご経験をお話いただきました。大学卒業から、安定的かつ大企業であった日本電信電話公社になぜ入社されたのか、そして、40歳で部下3000人という大部長の地位からなぜ起業家となることに踏み切られたのか熱心にお話して下さいました。なかでもそれらの決断に大きく影響を与えた留学時代のエピソードが印象的でした。千本氏はフルブライト奨学生としてフロリダ大学に留学されていた際に日本とアメリカの価値観の違いから、競争社会で生き抜く会社のあり方を間近で感じたということでした。千本氏がルームメイトとの会話の際、日本では安定的で国営である独占企業が良いとされていたことに対し、温厚なルームメイトが声を荒げて指摘されたそうで、それはフェアに競争する会社によって社会が進展するという価値観と正反対だったからということでした。日本に帰国後、日本電信電話公社が民営化された際に、千本氏はこの留学の経験が思い返され、起業を決意したと仰っていました。その後、日本電信電話公社と新たに競争する会社として現在のKDDIを起業されました。規模の差があっても、ベンチャースピリットと、コストとリスクを抑えた効率の良い策、さらには素質を補完しあえるパートナーを通じて成功されたということでした。千本氏はその後もチャレンジを続け、auやイー・モバイルの創業に携わられました。私たちはチャレンジを続ける千本氏の魅力や、尽きることのない情熱と若々しさに圧倒され、挑戦に踏み切る重要さをひしひしと感じることができました。
その後、起業家として必要なことを仰っていたことを踏まえて、「起業家に大学教育は必要か」をテーマに学生だけで議論しました。どの班でも活発な議論となり、最終的な結論も、必要でないとした班と必要だとした班が半々に分かれました。必要でないとした班の主な理由として、大学教育は起業に有用であるが必ずしも必要だとは言い切れず、むしろダブルスクールなどで実用性の高い教育を受けた方が良いということでした。一方で、大学教育が起業に必要だとした班の主な理由としては、幅広い視野や人脈形成、大学卒業という信用の獲得ができるからということでした。また、他に理系の学部ならば専門性が高く、起業する際に役立つだろうという意見もみられました。大学そのものの意義を問いた今回の議論は、私たちの人間形成はいかにされるべきかということまで通じていました。私たちはどのように選択をしていくべきか、その指針の一つとなった貴重な場となりました。最後にこの場をお借りして、お忙しい中講演をしてくださった千本氏に心よりお礼申し上げたいと思います。本当に有難うございました。
(藤原哲哉)