2015.12.26 KIP Forum "今後の日本社会におけるグローバル人材育成のあり方"
四方敬之氏 外務省大臣官房人事課長
12月フォーラム開催。今回は、1986年に外務省に入省なさり、北米第二課長、国際法局経済条約課長、内閣副広報官、英国公使などを歴任された後に、2014年7月より外務省大臣官房人事課長を務めてらっしゃる四方敬之氏をお招きし、“今後の日本社会におけるグローバル人材育成のあり方”というタイトルでご講演して頂きました。KIPの理事をも務めて下さっている四方氏は、KIPが政治問題をいかに先取りして扱っているかということ、そしてそこから発展して大学が本来どのような役割を担うべきかということの中で特に英語教育に焦点を当てて、実りあるお話をして下さいました。
前半では、政治界の第一線でご活躍なさっている四方様だからこそご存知の、日米やその他太平洋沿岸諸国をめぐる経済協定の変遷、それら各国の思惑について具体的に解説して下さいました。現在議論が活発になっているTPPですが、実はKIPでは世間で注目される以前からTPPのシミュレーションがなされていたそうです。政治家でなくとも、私達が生活と強く結びついている公共政策に関して考えることは必須ですが、KIPで深く議論する場を頂けることがいかに恵まれているかを実感しました。一方で、大学では次の社会への自分の立ち位置を考える機会が十分に提供されているのかという問題を四方氏は提起なさいました。今日の日本の大学では早期に専攻を決める形式が一般的で高校生の時点で文系か理系かを既に選ぶ者も少なくないが、海外で重視されているのはwell-roundedな人材である中、日本で高校や大学で文理を分けるのはそもそも必要ないのではないかというご指摘はもっともだと思いました。というのも、私自身高校生のときに文理の選択をしなければならないことに違和感を抱いていたためです。また、海外経験の豊富な四方氏は現在のlingua franca(共通言語)である英語が国際舞台でどんなに重要であるか、そして日本人が英語での表現力不足のためにいかに損しているかを説かれました。日本が世界の中で生き延びていくために社会全体の英語のレベルをどのように上げるか。この根本的な問に、四方氏が比較なさっていた英語力を測るいくつかの指標(TOEFL,TOEIC,PTEなど)について考慮しつつ、まっすぐ向き合って参ろうと思いました。
後半では、今回のフォーラムテーマに即して「大学教育では実学と教養のどちらをより重視するべきか」という議題についてグループディスカッションを行いました。今回の議題に関しては、そもそも「実学」や「教養」が具体的に何を指すのかが曖昧であるために、初めに定義付けを行ったグループが大半でした。ただ、グループごとにその定義が細かいところでは違いがあるとはいえ、何を専攻するにしても後々その他の分野の知識が役立つことが多いので「教養」をより重視すべきとの方向性は一致していました。また、そのための具体策として大学での単位制をなくすのが良いというものなど未来志向の提案をしたグループもありました。ディスカッションに参加した全員にとって身近な話題であるだけに、活発な意見交換が行われました。お忙しい中講演のためのお時間をとって下さった四方氏に、この場をお借りして感謝の意を述べさせて頂きます。ありがとうございました。(藤﨑照世)