2015.11.7 KIP Forum “グローバリズムの落とし穴”
藤崎 一郎氏 前アメリカ駐米特命全権大使

11月フォーラム開催。今回は、2012年までアメリカ駐米特命全権大使を務められ、退官後現在は上智大学特別招聘教授・国際戦略顧問、一般社団法人日米協会会長など幅広くご活躍なさっている藤崎一郎様をお招きし、“前駐米特命全権大使、世界観を語る―グローバリズムの落とし穴―”というタイトルで、ご講演を頂きました。グローバリズムの誤解や、大使のご経験からアメリカ大使はどのような役割を担っているか、また、日本人として海外へ出たときに知っておくべきことは何かなど、貴重なお話を伺いました。

前半では、日本とアメリカに関する外交クイズをした後、「グローバリズムの落とし穴」という題で大きく3つのカテゴリーに分け、“国”“発信”“語学”に関してお話をしていただきました。海外へ出たとき、日本のことを知らないのは恥ずかしいと海外へ出ることに臆する日本人が多いですが、藤崎氏は次の4点についての知識と意見を持っていれば良いのだと教えてくださいました。1つ目は東日本大震災の復興への知識、2つ目は原発への知識と意見、3つ目は地球温暖化、4つ目は難民です。国を超えて異文化の人々と関わるには、自国の情勢について知ることと、国際的関心を高めることが重要であると感じました。また、“発信“だけが重視され、自分の話をしてしまいがちな日本人が多く、一方的な“発信”に偏ってしまう傾向にあります。一方、藤崎氏は“受信”の大切さも強調していらっしゃいました。海外では家族の写真をオフィスの机に飾ってあるなど、相手の情報を聞き出す手がかりを見つけることがコツだとおっしゃっていました。これからのグローバル社会で生き抜く日本人に求められていることは、受信しながら発信していくことであるとわかりました。

 

後半では、今話題のテーマである「復興・地震対策が進まないのにオリンピックに力を注ぐべきなのか」また「日本はさらに軍事的役割を世界的に果たしていくべきか」という内容でグループディスカッションを行いました。オリンピックがもたらす経済効果は期待できますが、関心事がオリンピックに偏り、“被災地離れ”になってしまわないためにもメディアによる関心も必要であるという意見が出た一方、今も仮設住宅で暮らしている方々を無料で競技会場に招待するなど、グループによって様々な捉え方がありました。もう一つのテーマに関しては、軍事的役割を果たすことで国際的なプレゼンス・発言権を高められるという賛成派がいた一方で、それは現在の世界のトレンドから外れており反発を招くという反対派もおり、結論には至りませんでした。どちらのテーマも今日本が抱える重要な話題であったため、非常に活発な討論となりました。お忙しい中、お時間を割いて講演にいらして下さった藤崎様に感謝の辞をお送りいたします。ありがとうございました。(髙橋愛美)

戻る