2013.2.23 KIP Forum 「国際ビジネスの現場と、そこで通用する日本人への道」
安田 信 氏 (株)安田信事務所代表取締役社長
今回のフォーラムでは、国際ビジネスに通用する日本人像についてのお話を聞けた。登壇者は安田様である。
21世紀からのグローバル化に伴い、世界のビジネスはさらに国際性を増した。英語の公用語化や多様なネットワークの急速な普及は、国際社会のあり方を大きく変えつつある。日本人は、その大きな変動の波に乗り切れているだろうか。答えは否である。
現在の日本社会は、依然として国際的なつながりが希薄だ。政府や企業の単位でしか国際的な交流を進められず、個人単位の交流は浸透していない。私達、日本人には個人感覚で世界の動向を認知する機会が極端に少ないのだ。英文法を学ぶも英会話ができない日本人。単一の言語や文化に依存した生活様式。これらの出来事は、日本がいずれ国際社会に取り残される懸念を示している。
日本人が国際ビジネスに通用するためには、個人単位の国際的な交流が欠かせない。英会話や様々な文化に触れることが必要なのだ。国際的な交流を通して、自分が世界の一員であることのアイデンティティを形成する。自分は日本人でもあり、国際社会の一員でもあるのだ。日本人という同じ枠組みの中でなく、国際社会における他者との比較の中で、再度自分を見つめ直す時がきている。
フォーラムの中で、もう一つ印象的だった言葉がある。それは国際ビジネスに通用するためには、個人としての人間性が欠かせないということだ。効果的なリーダーシップを発揮するには、意見調整能力だけでなく、人間的な魅力が必要である。高い能力があっても、人がついてこなければリーダーとは言えない。
私は人間的な魅力を、人の良心に訴えかける力だと考えている。国際ビジネスを歩めば、価値観や意見が異なる人々と多く出会うだろう。その中でリーダーシップを発揮させるためには、何よりも説得力が大切だ。正しい目的を理解し、周囲に正当性を熟知させる。それは多様な人々を率いるために必要不可欠な能力でもある。
価値観や歴史認識が異なる人々と相互理解を深めるには、彼らの心を掴むことが大切だ。私は言語や文化、価値観が違えども、人としての良心だけは世界共通だと考えている。価値観や歴史認識に訴えることも時として必要だが、枝葉だけでなくその人の「根幹」に訴えることも同様に重要なのではないか。理論と心で周囲を魅了し、新たな分野を切り開くリーダー。そのようなリーダー像こそが、今後の国際ビジネスの場で求められているのではないか。(渡辺潤)