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2015年3月28日第6回シンポジウム「地域研修から学ぶ地域の現状と課題」
追悼の辞「遙かなる国際人 理事・緒方四十郎氏とKIP」
元KIP委員長 和田豪介(東京大学法学政治学研究科)

 初代KIP委員長の東京大学の和田豪介と申します。
 まずは、緒方さんの追悼という光栄且つ身に余る機会を与えて下さったパッカード理事長、KIP委員会に感謝の言葉を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
 昨年の4月14日にわたしたちKIPを語る上で本当に欠かすことのできない理事の緒方四十郎氏(敬愛をこめて、以下「緒方さん」)が逝去されました。1年に1度KIP会員が友人たちともに集うこのシンポジウムの場をお借りして、初めてKIPに来られた方や後輩たちにも、緒方さんのお人柄やKIPへの想いを、緒方さんの教えを直接受けることができた者のひとりとしてお伝えするとともに、皆様一人一人にKIPの活動がどんなことを目指しているのかを改めて考えてみる機会にしていただければと思います。

1.簡単な紹介

 まず、緒方さんの人柄を紹介します。緒方さんは、朝日新聞主筆で自民党の最初の総裁が予定されていた、緒方竹虎氏の三男でおられ、また、奥様は元JICA理事長・特別顧問の緒方貞子さんです。
 緒方さんご自身は、戦後の東京大学法学部を卒業され、日本銀行の理事や日本開発銀行の副総裁を務められた方で、プラザ合意など対外関係を統括されていた「国際人」です。特に、当時日銀においては、海外赴任というのはあっても、留学は奨励しないといった風潮があった中で、「普通の銀行人となる前に、国際人になりたい」と考えて、フルブライト奨学生として渡米され、フレッチャースクールで学ばれたそうで、まさしく戦後の日本を形作ることに挑戦していった第1世代の旗頭であったのだと思います。
 KIPにおいては、2010年に一般社団法人化する以前から、お世話になっており、このシンポジウムの第1回のファシリテーター・スピーカーを務められたのも緒方さんでした。ユーモアのある語り口でこの場の聴衆を惹きつけていたのが、KIPに入りたての私にとってはとても印象的で、KIPという活動をもっと知りたい、もっと貢献したいと考えて私が委員会に入った一つのきっかけでした。先程も述べたように偉大な方であるにも拘らず、私たちの活動にも普段から密に関わってくださって、幅広い知識と経験から私たち学生のプロジェクトにも陰ながらアドバイスを下さっていましたし、学生がルーズな行動をしてしまった際には、厳しく叱って下さり、KIPが大切にする「礼儀」というプロセスの重要性も示して下さったのではないかと、振り返って、緒方さんの存在の大きさを感じるばかりです。

2.3つの教え

 緒方さんは常々、「日本人が常に外に学びながら、自分の考えを持ち、より積極的に世界に貢献する」ことを訴えておられました。そのために重要だとおっしゃっていたことを、私なりに3つ少し紹介したいと思います。
 1つ目は、知的好奇心、特に「未来を考えるために歴史を学ぶ」重要性、2つ目は、人のつながりの重要性、3つ目は、自己犠牲・貢献・還元の精神の重要性です。
 まず、「歴史を学ぶ重要性」に関して、です。緒方さんは、もちろん銀行家として活躍されていたのですが、国際政治「史」の岡義武先生の門下で学んでおられたといったことだけでなく、西洋古典を読むことや日記を書くことの重要性を訴えておられた点からも、緒方さんの本質は広い意味での歴史家的な部分であったのではないかと私は考えています。すなわち、未来を自由に考え、自分の意見を発信するためには、私たちの所与の前提である歴史から学ぶこと・そしてそれを伝えていくことが不可欠であるということをおっしゃりたかったのではないでしょうか。
 次に、「人のつながり」の重要性です。社会を動かす原動力は、もちろん表面に出てくる法や経済といったオフィシャルな社会システムの場合が多いのですが、その裏側を支えているのは、非公式の「人のつながり」なのではないかと感じています。余談ですが、緒方夫妻の出会いは、岡義武先生を囲む集まりであったとフォーラム後の談笑する中で伺いました。もちろんこういう話は、書籍やWikipediaには書いていないわけで、こういう人の出会いが起こるのも、こういう話が聞けるのも、非公式な人のつながりの中だからこそだと思います。そして、緒方さんは「自由に考え、挑戦する」ことを潰されないためには、そのような「仲間を作る」ことが大切であるし、仲間がいて初めて自己犠牲や貢献といった部分が学べるとおっしゃっていました。
 そして、少し手前味噌ですが、以上に述べたような緒方さんが大切だとおっしゃる部分を共に学ぶことが出来る場が、このKIPなのではないかというのが私の結論です。今日はじめて来られた方は、このKIPをどういう団体と言って紹介されてきたでしょうか。もしかすると「勉強会だよ」とか「学生団体だよ」とか「交流会だよ」といって紹介されたかもしれませんが、おそらくその説明はどれも間違っていて、パッカード理事長を始め、ここにいらっしゃる理事たち、スピーカーの皆様、アラムナイ、そして今いるメンバーの皆さんが、大学・年齢・国籍を超えて手を携えて、先ほどのどれでもない新しいもの、そしてそれはおそらく緒方さんの志に適うものを作ろうとしているというのが正しいのだと思います。

3.今日のシンポジウムでやってほしいこと

 最後に、緒方さんの志に沿うために、今日のシンポジウムを機にやってほしい3つのことを皆さんにお願いしたく存じます。
 1つ目は、自分の意見を是非「積極的に」述べるよう努めてください。緒方さんの言葉を借りれば、「日本人の消極性と表現の不明確さ」は緒方さんの留学時代から改善されていないとのことです。私自身、KIPの初回はほとんど話せず挫折感を感じましたので、難しいことはよくわかっています。しかし、是非、講演後の質問やグループディスカッションでの発表などで、まずは発言をし、それができる方はそれをいかに簡明に表現していくか、に挑戦してみてください。
 2つ目は、折角、世代を超えた志ある100名以上が集まっていますので全く新しい知り合いを3人今日作ってみてください。
 そして、最後の3つ目は、もし今日を終えて、KIPって楽しいなと感じたならば、「自分にとってKIPってどういう団体だろうか」、そして「どういうKIPを作りたいか」を少し思いを考えてみてください。KIPを作っていくのは、パッカード理事長でも、KIP委員会でもなく、あなた自身です。
 以上をもって私の緒方さんへの感謝と、緒方さんの「志」への心からの連帯の意の表明とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

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