2017.9.29 KIP 9月イベント「ロシアにおける原子力技術への挑戦と課題」 ザヴィヤロフ・イゴール氏:東京大学大学院でComputer Scienceを専攻。ロシア出身のKIP留学生メンバー。
Igor Zavyalov氏:ロシア出身のKIP留学生メンバー。ロシアの大学を卒業後、日本に留学し現在は東京大学大学院でComputer Scienceを専攻。大学で原子力を専攻していたことから原子力発電について講演をして下さいました。
本フォーラムは二部構成となり、前半はイゴールさんのご講演と質疑応答、そして後半は講義を踏まえて「原子力発電の利用はやめるべきか」をテーマに設定し、学生同士で英語ディスカッションを行いました。
イゴールさんが説明してくださった内容は以下のようになります。ロシアにおいて原子力発電所の存在は社会問題となっています。長い間、原子力発電は安全で効率的なエネルギーであると考えられており、その有用性からロシアでも医療や農業、浄水、氷解、宇宙分野などに利用されてきました。しかし1900年代に多数の事故が発生し、廃棄物の処理が困難で事故に繋がりうること、また知識や教育の不足、政府による原子力事故の隠蔽によって住民が放射能の汚染を知らないでおり危険があることが判明しました。さらに現在、ロシア政府は原子力廃棄物の貯蔵施設を拡大し、他国からの廃棄物を受け入れることを計画しており、被曝者に対する補償も不十分であるため社会的に問題となっています。原子力発電は効果的で環境にも良い発電法ですが放射性廃棄物の処理は困難で、事故が起きれば環境や生態系に対し非常に悪影響を持つためその使用については深く検討する必要があります。
後半は、日本でも現在話題になっている「原子力発電を廃止すべきか」というテーマでディスカッションを行いました。全てのグループで意見が分かれましたが、廃止賛成の意見としては、日本は小さい島国かつ自然災害が多く、事故が起きる可能性が高いので、グリーンエネルギーなど環境負荷の小さい電力に代替すべきとの意見が出ました。また廃止に反対する意見としては、地球温暖化の進行が懸念される中で、原子力発電の環境に対する影響は比較的小さいため使用を継続すべきである、という意見が出ました。その他には、事故や汚染などのリスクが大きいため国によって決めるべきであり、特に日本のように国土の狭い国では地震やそれに伴う爆発があれば甚大な被害があり、代替エネルギーの研究に開発費をかけるべきであるという意見もありました。短い時間でしたが、現在原発の是非が選挙でも争点となっているためその是非について考える良い時間となりました。
(有井 菜月)