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2017.2.27 KIP Forum “今日の欧州とイギリス政治の変容”
サイモン・キング氏 英国首相秘書官

講師紹介
サイモン・キング氏は政治と国際問題に関心を抱き、英国の三大政党の上級政治家に幅広い問題についての助言を行ってきました。キング氏は1990年代、国家安全保障と国内政策を専門にした政策顧問としてイギリスの公務に携われました。2008年から4年間は首相秘書官に任命され、2名の首相(ゴードン・ブラウン首相とデイビッド・キャメロン首相)と緊密な関係をとっていました。2012年には当時の内務大臣であったテレサ・メイ氏(現在の英国首相)の戦略ディレクターに任命されました。

2月フォーラム開催。今回は、英国のブラウン首相、キャメロン首相の補佐官を務められたご経験があり、現在は日本で活動していらっしゃるサイモン・キング氏をお招きし、主にイギリスがEUを離脱するにいたった要因についてご講演をいただきました。

キング氏は、何故イギリスがEUから離脱するに至ったかを説明してくださいました。地域ごとに違いはあるけれども、全体としてイギリスの国民は変化を求めていたといいます。その理由として、グローバリゼーションと移民という二つのポイントからご説明いただきました。

グローバリゼーションは資源を適切に分配することが容易になるため、各国の経済にとって好影響をもたらすと考えられています。しかし、いい影響だけではありません。まず不平等を促進することにもなります。貧富の差は拡大し、貧しい人はより貧しくなる、スキルがないと勝てない時代となっているのです。次に、いわゆるグローバル企業は成長を続け、やがて税を払わなくなる、という恐れもあります。そして、数十年前は経済力が弱かった国々が急激に発展してきていることにより、イギリスの市民が以前よりも自国に誇りを持てなくなってきているという心理的な影響も与えているといいます。

次に移民の問題についてです。EUの重要な規律の一つに、加盟国の国民が自由にEU域内を移動できることがあります。ただそのため、毎年10万人ほどの人々が東欧からイギリスへ移動しているなど、移民の流入に歯止めがかからなくなっています。移民により生ずる主な問題に、アイデンティティの喪失があるとおっしゃっていました。イギリスの地元の文化や伝統を受け入れようとしない移民は少なくなく、代わりに自分たちの文化を地元に持ち込んできます。このような移民の行動が地元住民に不快感を与えています。またテロの増加も移民に対する反感を抱く要因として捉えられています。

EUの離脱にはSNSの存在も大きいといいます。ネットやSNSから情報を収集することは自分と似た意見のみを収集してしまうという危険性もはらんでおり、EUの離脱について中立な視点から考えることを妨げる要因にもなったと分析していました。

討論では大量の移民に対して政府はどのように対処すべきか、というテーマの下、各グループで具体的な施策について話し合いました。発表では、言語学習を通じて受け入れをしやすい国内環境を整えると同時に、移民が大量に流入しないよう海外に投資を行って経済成長を促進し、海外に行かなくてもいいような国際環境づくりをすることが大事であるという意見が出て、移民の問題は国内だけで完結するものではないということを再確認させられました。

今回のフォーラムでは、イギリス国民が日常生活からアイデンティティの喪失にさらされている、という日本にいるだけではわからない移民にまつわる問題を説明いただき、視野を広げることができました。このような機会を下さったKing氏に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

(Igor Zavialov、訳:多田哲朗)

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