English

MBP News vol.1

今、マイクロプラスチックの問題を始め、プラスチックが環境に与える影響が注目されています。KIPでも2017年秋に行われた大学生国際会議in三重(UNICOM)において、海岸がプラスチックで埋め尽くされてしまった答志島を訪れ、海洋ゴミの被害の甚大さを目の当たりにしました。さらに、大学生が身近で出来ることとして、マイボトルを持つことで少しでもプラスチック消費の減少を図り、それが環境保護につながればとKIPマイボトルを作り、広めていく活動をしています。
今回はその活動の根幹である「なぜプラスチックの量を減らさなくてはいけないのか」という問題意識について、アメリカの学生の環境問題への取組を実際に見てきた2018年のアメリカ研修メンバーの鎌倉真奈さんに記事を書いていただきました。

プラスチックの環境問題、一度整理してみませんか?

プラスチックに関する報道を目にしながら、皆さんはこんな疑問を持ったことはないでしょうか。
 「プラスチックの使用を減らすのではなく、プラスチックのリサイクルを徹底すればいいのでは?」「マイクロプラスチックの問題は、マイクロビーズに対する法規制が進んでいるし、そのうち解決するよね?」「生分解性プラスチックが普及すれば済む話でしょ?」
いずれのアプローチも、プラスチックの環境負荷を下げることに一役買うでしょう。しかし残念ながら、プラスチックの環境問題の完全な処方箋にはなりえません。
 本記事では、プラスチックを巡る諸問題を分かりやすく整理していきたいと思っています。最後までご覧になって、私たち一人一人にしかできない取り組みがあることを実感して頂けると嬉しいです。

リサイクルの限界

2017年にScience Advances誌上に発表された論文によると、1950年から2015年にかけて生産されたプラスチックは83億トンを超え、うち63億トンがゴミとして廃棄されました。廃プラスチックのうち、リサイクルされたのはわずか9%。残りの12%は焼却処分され、79%は埋め立て処分または海洋等の自然環境中へ投棄されています。2015年に関しては、リサイクルが19.5%、焼却処分が25.5%、埋立または自然環境中への投棄が55%でした。プラスチックの原料の石油資源は有限であること、またプラスチックは自然環境中で分解されきれずに残存し続けることを考えると、これは由々しき事態です。ゴミの分別・回収システムの整備が急務となっています。
 日本の状況はどうでしょうか。一般社団法人プラスチック循環利用協会の2018年の資料によると、2016年の日本の廃プラスチックの総量は899万トンで、そのうち84%が有効利用されています。世界平均のリサイクル率よりもだいぶ高い数値です。しかし、有効利用の内訳を見ると、マテリアルリサイクルが27%、ケミカルリサイクルが5%、熱回収が68%と、熱回収による有効利用が過半を占めています。

マテリアルリサイクルされたプラスチックは同じ化学物質のまま、ケミカルリサイクルされたプラスチックは原料やモノマーに還元された後、再び製品として利用されます。一方、熱回収はプラスチックを焼却し、廃熱を発電や温水づくりに活用する仕組みです。以上より、日本のプラスチック処理体系は、環境負荷の大きい焼却や埋め立てによるプラスチックの処分割合が低い点で優れている一方、再生利用が徹底しているわけではないと分かります。再生利用にもリサイクルのための資源の投入が必要なことを踏まえれば、プラスチックごみの総量を減らすことが大切と言えるでしょう。

マイクロプラスチックによる海洋汚染

マイクロプラスチックとは、直径5mm以下の微細なプラスチック粒子です。マイクロプラスチックに吸着した有害な化学物質が食物連鎖に取り込まれ、生態系に悪影響を及ぼすことへの懸念が世界的に広がっています。
 マイクロプラスチックは、一次的マイクロプラスチックと二次的マイクロプラスチックに大別されます。一次的マイクロプラスチックは始めからマイクロサイズで製造されたプラスチックで、洗顔料や歯磨き粉に含まれたマイクロビーズが代表例です。各国で規制が進み、日本では2018年6月に海岸漂着物処理推進法が改正され、事業者がマイクロプラスチックの使用抑制に努めることが明記されました。一方、二次的マイクロプラスチックは、当初大きなサイズで製造されたプラスチックが、自然環境中で破砕・細分化されて、マイクロサイズになったものを指します。発生の抑制には、各国における廃棄物の管理システムの確立やリサイクルの推進、また啓発活動が必要となります。
海洋中には膨大な量のプラスチックごみが流出しています。2015年にScience誌に投稿された論文によれば、2010年には推計で480万トンから1270万トンのプラスチックごみが海洋に流れ込みました。推計量の最大値を取ると、排出量が最も多いのは中国で353万トン、2位がインドネシアの129万トン、3位がフィリピンの75万トンと、上位にはアジアの国々が並んでいます。日本は30位の6万トンでした。

マイクロプラスチックによる海洋汚染は、生分解性プラスチックの普及で解消されるのでしょうか?国連環境計画(UNEP)は2015年の報告書で否定的な見方を示しています。プラスチックの生分解には、堆肥化装置や長時間の50℃以上での保温といった、海洋環境中にはない条件が必要となるからです。分解を促すための酸化促進剤を添加した酸化型生分解性プラスチックもありますが、2017年にEnvironmental Science & Technology誌に発表された論文において、酸化型生分解性プラスチックから発生するマイクロプラスチックも環境中に長期にわたって残存し、環境に悪影響を与えることが指摘されています。

私たち一人一人にしかできないこと

プラスチックの環境問題の解決には、ゴミ収集システムの整備や、廃プラスチックを有効利用するための技術の普及が欠かせません。しかし、私たち一人一人が大量生産・大量消費・大量廃棄する生活スタイルを見直し、資源のリデュースに取り組むことにも、社会を今日から動かす力があると思います。環境省でも2018年10月に「プラスチック・スマート」キャンペーンを立ち上げ、ゴミ拾いイベントへの参加やマイバッグの活用といった個人の活動を、SNSを通じて発信することを呼びかけています。皆さんも自分ごととして、まずは使い捨てプラスチックの使用を見直すことから一緒に始めてみませんか。

(東京大学教養学部 鎌倉 真奈)

KIPでも現状の社会を悲観するのではなく、自分たちが行動を通じて未来を変えていく、またそれを広めていくことを大切としています。一緒にそういった思いを持って活動していきたいと思っている学生をいつでも歓迎しています!

参考資料
・Jenna R. Jambeck, Roland Geyer, Chris Wilcox, Theodore R. Siegler, Miriam Perryman, Anthony Andrady, Ramani Narayan, Kara Lavender Law, 2015, “Plastic waste inputs from land into the ocean”, Science, 347(6223): 768-771.
http://science.sciencemag.org/content/347/6223/768.full
・Roland Geyer, Jenna R. Jambeck and Kara Lavender Law, 2017, “Production, use, and fate of all plastics ever made”, Science Advances, 3(7): e1700782.
http://advances.sciencemag.org/content/3/7/e1700782.full).
・Stephan Kubowicz and Andy M. Booth, 2017, “Biodegradability of Plastics: Challenges and Misconceptions”, Environmental Science & Technology, 51(21): 12058–12060.
https://pubs.acs.org/doi/ipdf/10.1021/acs.est.7b04051
・UNEP, 2015, “Biodegradable Plastics& Marine Litter”.
https://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/7468/-Biodegradable_Plastics_and_Marine_Litter_Misconceptions,_concerns_and_impacts_on_marine_environments-2015BiodegradablePlasticsAndMarineLitter.pdf.pdf?sequence=3
・一般社団法人プラスチック循環利用協会, 2018, 「プラスチックリサイクルの基礎知識」.
https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf
・環境省, 2018, 「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律の一部を改正する法律の概要」.
https://www.env.go.jp/water/marirne_litter/02_1kaiseigaiyou.pdf
・早水輝好, 2016, 「海洋ごみとマイクロプラスチックに関する環境省の取組」.
http://www.env.go.jp/water/marine_litter/00_MOE.pdf

戻る