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2019年オーストラリア研修 特集ページ

今年のオーストラリア研修では「人口減少社会における移民政策」をテーマに オーストラリアの名門大学、企業、政府機関を3週間かけて訪問します。本ページでは、研修に関連するトピックについてお伝えしていきます。

アラムナイの視点

以下では、研修に関連してアラムナイの方から寄稿頂いたものを掲載しています。

おススメ書籍紹介

ここでは、KIPメンバーが日々の研究で触れている本をご紹介いたします。

望月優大著『ふたつの日本:「移民国家」の建前と現実』

「私たちは今、かつてない体験をしている。電車に乗れば、アジアのどこかの国の言葉がふと耳に飛びこんでくるし、近くのスーパーでは、大根や豆腐をぶら下げて買い物をしている留学生たちをよく見かける。またオフィス街では、日本人の同僚に混じって外国人ビジネスマンが働く光景は、あたりまえとなってきた。この新しい事態に日本人はとまどっている。」この文章を読んで、全くその通りだと感じた方も多いのではないでしょうか。しかし実はこの文章、今から30年以上も前の1988年に出版された本の冒頭から引用したものなのです。

平成30年間を通じて、日本は多くの外国人を受け入れてきました。冒頭の文章が書かれた頃である平成元年には100万人程度であった在留外国人数は、いまや300万人に迫っています。こうした現実は、例えば私たちに身近なコンビニエンスストアや飲食店における急激な外国人労働者の増加など、多くの人が実感しているのではないでしょうか。

その一方で、日本では長らく「移民」という言葉が忌避されてきました。日本政府も意図的に彼らのことを「移民」ではなく「外国人労働者」と呼び、いまだに外国人を支援する専門の省庁も存在しません。著者の望月氏はこうした日本の在留外国人に関する「現実」と「建前」に着目し、それらからなる「ふたつの日本」にどう向き合っていけばいいのかについて、わかりやすく解説しています。

本書ではまず、現行の受け入れ制度が図を交えてわかりやすく解説されています。これは複雑な制度を理解し、研究を進める上でとても役に立ちました。そのほかにも、著者が実際に行ったインタビューに基づく「移民」の声が紹介されています。そこでは来日して30年経つのに日本語がままならず、いまだに工場で働く日系ペルー人の例など、「建前」を守るために弱い立場におかれてきた人々の不安定な現状がありありと示されています。

こうした「現実」と正面から向き合い、日本で多様な人々がお互いに気持ちよく過ごせる社会を実現させるためには、どうしたらよいのでしょうか。その答えを探るべく、私たちは外国人の労働環境に詳しい弁護士に直接お話を伺う他、実際に外国人労働者を多く受け入れる群馬県やオーストラリアで、受け入れ側と労働者の話を聞いてきます。その際に、本書から学んだ制度への理解や問題意識が活かしていきたいと思います。

(慶応義塾大学法学部 昼田 里紗)

毛受敏浩著『限界国家:人口減少で日本が迫れる最終選択』

限界集落という言葉を聞いたことがありますか?人口減少が深刻化し、地域社会の維持が困難になった集落のことを指しますが、2050年には全国の6割以上の地域で、2010年の半分以下の人口になると言われています。毛受氏は、この現状を「日本列島全体が、『限界国家』になる危機を迎えている」と表現しました。そして、「移民を受け入れる」という最終選択をするべきだとし、次のように主張を展開しています。

  1. 外国人犯罪数の上昇・社会保障費負担の上昇・日本人の雇用減少への懸念や、それに対する日本人労働力の活用・縮小国家実現・生産性の向上の可能性は、たしかに考えられます。しかし、実際に外国人による犯罪数は増加しておらず、定住外国人を受け入れることでむしろ年金制度にプラスの効果があります。また、日本人労働力のみでは人口減少を補うことはできず、日本のあらゆる産業が衰退せずに、自国の文化を守り、生活の質を担保するためには、定住外国人を受け入れるしかないとしています。

  2. 外国人を受け入れる体制ができてないのではないかという声に対し、自治体側には実際に受け入れする準備ができているとし、日本人や日本生活に対する外国人住民の評価は実際に高く、欧州で頻発しているような宗教問題も少ないことから、日本は外国人受け入れに成功しているとも述べています。

以上の二点、つまり定住外国人の必要性の明言と、日本は外国人受け入れに成功しているという考えは、どちらも人口問題を研究している私たちにとっては衝撃的でした。そこで、自治体レベルの受け入れの実情を、人口減少が著しい地方に重点をおいて調査し、日本人・外国人両者にとって望ましい外国人の受け入れの仕方を探っています。もちろん定住外国人も大きな選択肢の一つですが、将来の日本社会を生きる者の責務として、私たち若者にできること・すべきことを考え、実行していきたいと考えています。また、本テーマにご興味のある方は、ぜひKIPまでお問い合わせください。

(慶応義塾大学法学部 鐏 京香)