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2018.1.11「グローバルな時代で君たちはどう生きるか?~国際機関で働く意義は何か?~」
元大蔵省官僚・元国際通貨基金(IMF)理事 慶應義塾大学大学院商学研究科教授 柏木茂雄氏

柏木茂雄氏:1973年に慶應義塾大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。1977年にはプリンストン大学でMPA(公共・国際関係)を取得。1993年に大蔵省国際金融局国際機構課長、1994年にはアジア開発銀行理事に就任。2000年には国際通貨基金政策企画審査局上級審議役を務め、2004年に国際通貨基金理事に就任。 2007年に慶應義塾大学大学院商学研究科教授になられ、2016年に慶應義塾大学特別招聘教授(大学院商学研究科)として活躍なさっている。

 1月フォーラム開催。柏木様は講演を大きく3つの論点に分けて話されました。まず、グローバル化とはどういう状況であるかを説明くださいました。柏木様は、グローバル化とは国境を越えてもの・カネ・サービス・人・情報などが動くと同時に、規制・行政・国家主権など国境を越えられないものもある状況のことであると述べられました。またこの動きは今後ますます深刻化していき、前述した国境を越えるものと越えられないものとのギャップを埋めていくことが当面の課題であると続けられました。そして市場が国内だけに限定されなくなった今日、世界は大競争時代を迎えその競争から落ちこぼれると所得格差の拡大、国内の対立激化が深刻化し、一国主義の台頭が起こるのではないかと指摘されました。現在の主要国名目GDPを見ると日本はここ20年横ばいであり、このままではアメリカや中国に引き離されるだけでなく、新興国に追い抜かされる日が来るかもしれません。

次に、柏木様はグローバル時代の働き方について論ぜられました。現在はグローバル化が進んでいると同時に変化の激しい時代を迎えたと述べられ、現在ある仕事の大半はなくなり将来の仕事の大半は現在存在していないものになるであろうとのことでした。グローバル社会と聞くと海外で働くことと結びつけられることも多いですが、日本国内でも外国人の上司、部下、取引先との仕事が増えグローバルな活躍が日本でも可能であると同時に、私たちはこれまでの考え方を改めなくてはなりません。また国際機関で働かれた経験を踏まえ、柏木様は国際機関で働く魅力とそのために必要な素質についてお話くださいました。魅力としては、国際機関での仕事は簡単なものではありませんが、スケールの大きさや充実感が格段に違うこと、多様かつ優秀な人材と対等に働けることがあります。必要な素質としては専門性やコミュニケーション能力、多様性に対する許容性、柔軟性、そして常に自分の考えを持つことだとおっしゃられました。

そして最後にグローバル時代を生き抜くための私たちへのアドバイスとして、自分を知り、自分の意見を持ち、自分を伝えられる能力を身につける大切さをお話しくださいました。特に自分を知るというプロセスは難しく、自分を知るためには他者や異なる考え方と向き合うことが必要です。多様性は、自分が今まで持っていた常識や既成概念から抜け出し新たな発想に繋がれるということから重要であると述べられました。 私には、今までグローバルな時代とは大競争時代であるということからこれから世界はギスギスした社会になっていくのだろうかという懸念がありましたが、世界各国の経済が発展するということは他の国の経済にも良い影響を与えるとおっしゃっていた点にとても共感できました。日本人として、日本の経済が発展し私たちが経験したことのない大成長の時代を迎えてみたいと思うと同時に、それが世界経済の発展にもつながれば理想であると考えました。

 以上を踏まえ、「日本人が国際機関で働く意義はあるか」というテーマのもと討論を行いました。やはり国際機関で働いてこそ得られる情報やできる仕事があるのではないかという意見がある一方で、調整役に追われてしまいより直接的なアクションを起こしづらいのではないか、という意見もありました。また、実際に生活の質の向上には物資の供給という直接的な支援が必要なので、モノの生産という意味で国際機関には成しえないことも多い、という意見はありました。しかし概して国際機関で働くことにはポジティブであり、国際的な場に日本人の協調の文化を持ち込むことで円滑な場づくりに貢献できるのではないか、という意見には皆賛同していました。

今回のフォーラムではこれからのグローバル世界の意味するところと、そこで私たちが目指していくべき姿を、強い危機感と共に明示していただきました。改めて、ご講演ありがとうございました。

(石井 理穂)

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