2017.8.2「アントレプレナーシップと教育アントレプレナー」
株式会社エムアソシエイツ代表取締役社長 源飛輝氏

源飛輝氏:KIPアラムナイの一人で、株式会社エムアソシエイツ代表取締役社長としてロジスティクスやトレーディングを中心とした業務を行っている。

 本フォーラムは二部構成となり、前半は起業家教育に対する源飛輝氏のご講演と質疑応答、そして後半はご講演を踏まえて、「起業家教育の義務教育へ導入の是非」とテーマを設定し、学生同士でディスカッションを行いました。

 最初のご講演では、アントレプレナーと事業主(ビジネスオーナー)の相違点、アントレプレナーの実際の事例、なぜ起業家はシリコンバレーを目指すのか、教育分野でのアントレプレナーという以上4点を中心にお話をして頂きました。
 まず、源氏はアントレプレナーの定義として「Change maker」という単語を使われました。アントレプレナーは事業をすること自体が目的である事業家とは異なり、事業を通して何らかの変化を作り出すのであると語られました。源氏はこのアントレプレナーの事例として、世間によく知られているBill Gates、Steve Jobsを挙げられました。まず、Bill Gatesはマイクロソフトと開発しIT業界を大きく発展させたのですが、彼の開発により、だれもが公平に情報を得ることができ、発信することが可能になりました。つまり、インドのカースト制度のような階級差に関係なく誰もがこのような世界に接することが可能になったのです。2つ目の例として挙げられたSteve Jobsはコンピューターという大きな物体を小さくて持ちやすいものに変化させることによって多くの人がいつどこでも簡単に情報を発信し、接することができるようになり、音楽を聴くことのような余暇活動も時間や場所に関係なく行うことができるようになったのです。このようなアントレプレナーとは単に事業を行うだけではなく、彼らによって社会が大きく変化するという「Change maker」としての役割を果たしているのです。
 このような多くのアントレプレナーは現在シリコンバレーに集まりがちなのですが、その理由としてシリコンバレーという地域が事業の資源や資金が沢山あるために、失敗の確率が低いことと関連していると指摘されました。

 また、現在このアントレプレナーは教育分野において大きく注目されています。今まではITなどに注目するアントレプレナーが多かったのですが、現在は教育業界がブルーオーシャンとして注目を浴びているからです。教育という分野は、高齢者の投資先として不動産と旅行とともに挙げられます。この教育業界でのアントレプレナーの例として、源飛輝氏は「Teach for America」を挙げられました。このプログラムは、貧富の格差による教育の不平等を解消することを目的としています。このプログラムでは、アメリカのアイビーリーグのような名問大学の卒業生が、比較的低所得層の多い地域で教育を支援します。このような事例はアメリカ社会に大きく貢献しています。しかし、教育というシステムは実施方法が国によって異なるので、その国の人のみがアントレプレナーとして活躍しやすいという弱点も語られました。

 今回のフォーラムの後半では、「起業家教育の義務教育導入の是非」とテーマを設定し、学生同士でディスカッションを行いました。私達のグループディスカッションでは、起業家教育という概念を精神的な資質の養成とスキルの上昇という二点に分けました。まず、起業家の精神的な要素である起業家精神とは様々なことに積極的にチャレンジすることと定義し、スキルという面ではより多くの起業家を養成するためのスキル上昇と定義しました。この起業家教育を義務化することの賛成意見としては起業家が多く養成されることによって国の経済が発展すること、学生たちの積極性の上昇が見込まれることなどが挙げられ、反対意見としては義務化が教育という面においては非現実的ではないかという意見が出されました。今回のディスカッションの総評として、起業家精神を保つということは、主体性を上昇させ、異なる意見を受容するという能力、つまり多様性を養うことになるため、起業家教育とは生徒やその国の開発に大きく役立つというアドバイスをいただきました。

 今回のフォーラムを通して、教育という分野の重要性と共に、起業家教育とは単に起業家を多く養成させるというメリット意外にも、学生たちの積極性や多様性を保つという内面を養成することができるという点があることを知る機会になりました。

(カン・キエ)

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