English

2016.07.09 KIP Forum “伝統文化と「家」を守る”
霞会館(旧華族会館)常務理事 水野勝之氏

水野勝之氏:略歴
旧刈谷藩・旧備後福山藩・下総結城藩水野家の末裔であり、水野旧子爵家第20代当主。現在、霞会館(旧華族会館)常務理事。

7月フォーラム開催。今回のフォーラムでは、水野旧子爵家第20代当主で現在、霞会館(旧華族会館)常務理事を務めておられる水野勝之氏をお招きし、「伝統文化と『家』を守る(華族制度と世襲制度)」をご講演をいただきました。歴史の教科書でしか学ぶ機会のない「華族制度」、自らの家や家族について知り、自分を見直すことの意義についてというところまでお話は続いていきました。

まず今回のフォーラムでは、通常大学生としてほぼ垣間見ることの出来ない世界について学習する機会だったような気がします。ご講義は、①華族制度の歴史や意義について、②「霞会館」の現在の活動について、そして最後に③「家」について知ることの意義、といった三部に構成されていました。
私たちにはあまり馴染みのないこの制度は、英国の制度に倣う形で1874年の大日本帝国憲法に始まり、現在の日本国憲法が施行された1947年まで続いたとのことです。華族の階級や、華族に列せられるうちの一つである「勲功」についてなど、普段聞くことのできないようなお話も伺いました。特に印象深かったのは、「華族制度ができたのは明治だが華族の元々の発祥は公家や大名、武家といった天皇をお守りする存在であり、皇室をお守りする(藩屏)ことが華族制度の存在意義の一つである」とおっしゃっていたことです。奇しくもフォーラムから1週間も経たない日に、皇室の法律である皇室典範の改正の議論が起こり、華族制度の側には常に「皇室」という日本独自の伝統の存在が横たわっているのだといったことを、このことを学ぶ機会を得たからこそ痛感することが出来ました。

明治時代より続く歴史ある親睦団体の旧華族会館は華族制度廃止と共に、「一般社団法人霞会館」として名称を改め、再スタートしました。日本の伝統文化を保護する事業を中心に、活動や交流が行われ、時には旧家族の方々だけの晩餐会もあるそうです。そのようなお話を伺いながら私は、霞会館の方々が、衣紋道(装束の着付け)、雅楽、蹴鞠、和歌さらには香道といった日本古来の伝統文化を守り広げてくださっていることに、改めて感嘆しました。
『旧華族の方は自らの「家」というものの存在を他の人よりも強く意識していることが多く、また「家」について知ることはすなわち自分を知ることにもつながる』という水野様のお言葉は、このあとの討論会にもつながる課題を残されとても印象に残っています。華族であったかどうかは関係なく、血縁として脈々と受け継がれてきた「家」ないしは「家族」という存在を考えることが、自らの存在意義を確立するひとつの拠り所となるのではないかと感じました。お話の最後には学生からの素朴な質問にも丁寧にお答えくださり、こういった世界に無知な学生たちにとっては貴重な時間となりました。

その後の定例討論会は「(自身にとって)家の存続を責務と感じるべきか」というテーマで「自分の家や家系に対する意識」を話し合い、同じテーマでも人によって「家」への想いや意識は様々であり、さらには責務を感じるべきかどうかという問いへの意見も様々であることに驚きました。
どのグループも「家」そして「家の存続」とは一体何なのかが共通話題となったようです。日本では古来より特に重要視されてきた「家を守る」ということが現在の生活では希薄化しており、家の存続を責務とすべきではないという意見が出る一方で、家について知り考えること自体が自らのアイデンティティの拠り所となるため、将来の子孫のために家という意識を存続させる責務はあるという意見もあり面白い議論がかわされました。また、グローバル化が進展し、国籍が希薄化すると「家」が自分の存在のアリカとなるという留学生の意見は新たな発見となりました。

最後にこの場をお借りして、ご多忙の中、学生に大変貴重なご講演をしてくださった水野様に深く感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。
(宮川健太郎)

戻る