2015.6.21 KIP Forum "オーケストラの経済学と日本の文化力"
加納民夫氏 独立行政法人日本芸術文化振興会 芸術文化振興基金運営委員会音楽専門委員

6月フォーラム開催。元NHK交響楽団常務理事の加納民夫様にご講義をして頂きました。オーケストラの語源や起源などクイズを交えて、大変興味深くご説明頂き、オーケストラのことを良く知らない私でもとてもよく理解することが出来ました。楽譜を手作業で切り貼りして演奏者の見やすい形にするライブラリアンや、指揮者やソリストのアシスタントを担うアテンダーといった仕事があることも今回初めて知ることが出来ました。こうした舞台に上がらない多くの人たちの支えがあってはじめて、一つの演奏が観客席に座る私たちに届くようになる。今まで何度も演奏を聴きに行きながら、演奏者しか見えていなかった私の未熟さを知りました。

オーケストラの経済的な収支は、そのほとんどが演奏収入で成り立っていると思っていましたが、演奏収入よりもずっと多くを行政や民間からの補助や支援で賄っていることがわかりました。ディスカッションでは、補助金の交付への賛否を議論しました。私は、幼いころおしゃれをして出かけていった演奏会の楽しかった思い出から、演奏会存続のためにも国が補助金を出すべき、と主張しました。ところが、日本を代表する伝統文化である歌舞伎や雅楽であればともかく、日本での歴史が浅くしかも日本独自のものとはいいがたいオーケストラに対して、本当に保護・育成の必要があるのか、反対派の筋の通った主張を聞いてしまうと、経済支援を受けて当然とは主張しにくく、日本のオーケストラの微妙な立場というものを痛感しました。(中岡桃子)

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