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2016年12月10日 KIP10周年記念イベント

写真 日本外国特派員協会にて、KIP10周年記念イベントが行われました。お世話になっている理事の方々や、フォーラムなどの日頃の活動にご協力を頂いた方々をお招きし、KIP会員、アラムナイ会員が、KIP設立10周年を祝うべく、総勢約90名が一堂に会しました。

始めに、KIP設立者であるパッカード啓子理事長からのご挨拶、そしてアラムナイを代表して白井絵里さんからのご挨拶を頂きました。
写真 理事長からは、KIP設立時から10年の歩みと現在、そして、今後の方針についてのお話を頂きました。10年前に本イベントと同じ会場で行われた討論会から始まったKIPの活動は、たくさんの方々に支えられて、現在では毎月1回のフォーラム、年に3回の地方研修、1−2回の海外研修、イベント、そして時にはシリーズ仕立てのセミナーと回数も多く、内容も濃いものになりました。会員数は、昨年から留学生会員も増え、現在では学生・留学生・アラムナイ会員と合わせて約150名になりました。【内なる国際化】、そして【考え・判断をし・そして行動に】という目標を掲げ、今後も活動に励んで行きます。

写真 アラムナイを代表して白井絵里さんからは、10年前の第一回目の活動に参加した際のこと、そしてKIPと過ごした10年間の中で、KIPが実際に社会を動かす力を持っているとご実感された経験についてのお話を頂きました。KIPは過去に、日本から留学する日本人学生への支援に関する提言を内閣官房に、そして東北の学生と共に、アメリカでの海外研修を通して、東日本大震災の復興戦略案に関する提言を東北の自治体に、提出させて頂いたことがあります。最後に、KIPで得たものを振り返ると共に、現会員へのメッセージで言葉を締めくくられました。

KIP10周年を記念する講演には、(株)海外通信・放送・郵便事業支援機構会長及び東京倶楽部理事長を務める高島肇久氏をお招きしました。NHKや国際連合広報センターでご活躍された経験もある高島氏から、「トランプ大統領誕生!~どうなる世界どうする日本~」と題した、米大統領選の結果と展望についてのお話をいただきました。私たちはこのご講演を通してアメリカ政治や日米関係にまつわる沢山のことを学びましたが、以下に、ご講演の一部を抜粋してご紹介いたします。

写真 この他、来場者での本交換や、KIP会員によるピアノ、バイオリン演奏が行われました。第二部の懇親会では、来賓の方々のご紹介や、アラムナイ会員へのインタビューも行われ、盛況な10周年記念イベントとなりました。
(文責:佐久間杏奈)

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10周年記念 高島肇久氏講演「トランプ大統領誕生!~どうなる世界どうする日本~」

写真 今回の大統領選に際しては大手メディアが繰り返し選挙予測を行い、ニューヨークタイムズは投票前日にヒラリー・クリントン氏勝利の確率を84%としていました。私(高島氏)もこれまでにクリントン氏と会う機会があり、「女性大統領になるならこの人しかいない」という確信を持っていました。しかし結果は当初、「泡沫候補」と呼ばれていたトランプ氏の勝利でした。この点については、多くのアメリカのメディアが「我々はなぜ間違えたのか」という反省を余儀なくされています。

選挙結果を見ると、今回の勝敗の鍵を握っていたのは白人労働者層だと考えられます。こうした白人労働者層の政治的立場は移ろいやすく、投票行動は世論調査では掴みにくかったのです。今回、ラストベルトと呼ばれるウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアといった州では、大学に進学せず「ブルーカラー」として生きる人々がトランプ氏に期待を寄せたことが、選挙戦を左右したと考えられます。彼らは外国人労働者の流入による賃金の停滞や失職に不満を募らせていました。アメリカ社会の経済的格差は深刻で、アメリカの家庭の60%が中間層であるにもかかわらず、トップ20%が全所得の50%を握っています。さらに薬物や酒による中毒を原因に白人中年男性の死亡率が高まっている現状も見逃すわけにはいきません。

トランプ政権の展望については、トランプ氏の経歴や人事から推測することが出来ます。トランプ氏は長年ビジネス界にいたことから、財政的な理由をもとに政策判断をすることが多いです。例を挙げると、アメリカが国外基地などに費やす軍事費について他国が「タダ乗り」しているとして是正を主張しており、日本の米軍基地も焦点の一つになっています。こうした従来の共和党とは一線を画す主張の裏には、トランプ氏を取り巻く専門家の存在があると見ています。なかでも右派のメディア経営者であるスティーブン・バノン氏、元軍人のマイケル・フリン、ジェームズ・マティス両氏といった人々の影響力は大きいと考えられます。ロシアと友好的な関係を示唆したり、中国への経済的圧迫をかけたり、日米同盟を軽視したりする発言から、今後のアメリカ外交は波乱の時代に突入すると言えます。

ローマ帝国の五賢帝の時代を指すパックス=ロマーナはその後、産業革命に成功したイギリスを指すパックス・ブリタニカに転用され、第二次世界大戦後はアメリカがパックス・アメリカーナの名を冠せられてきました。この自由と民主主義に基づくアメリカの世紀は、トランプ政権により終焉してしまうのでしょうか。冒頭のイアン・ブレマー氏を含めた悲観的な見方もあるなか、当選後のトランプ氏の態度は抑制的なものになるのでは、との声もあがっています。果たして、「ハネムーン期間」と呼ばれる就任直後の100日間に大きな成果は出るのでしょうか。旧来の民主党と共和党の政治を塗り替えることが出来るのでしょうか。今後のアメリカ政治、そして日米関係のゆくえを注視していかなければなりません。

最後になりましたが、選挙結果の裏にある米国社会の動向や今後の展望について新たな知見を授けてくださった高島肇久氏に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
(文責:森原彩子)

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